ダイナースカードの広告炎上が孕む、何重にも頭の痛い構造の問題

【この記事のキーワード】

 BuzzFeedは、この炎上を報じる記事にて、広告主である三井住友トラストクラブのマーケティング担当者から、<広く若者層に支持されているゲーテさんならではの独自の視点>から、若い読者向けの記事を作成したとの言質を取っている。マーケティング担当者は、「GOETHE」という雑誌の感度を信頼し、一任したということだろう。

 しかし「GOETHE」の読者ターゲットは30〜40代のハイクラスビジネスマン層であり、一般的に見て「若者層」と呼ぶことが妥当かどうか、まず疑問だ。ただ、長い伝統と格式を持つダイナースにとっては、30〜40代が若者層であり新規開拓の対象なのかもしれない。

 そう考えると、ただ単純に「若者の価値観とこの広告企画のズレ」を指摘しても意味がなくなる。問題は、この高齢化社会全体からみれば「若者」である30〜40代、しかも政治経済を動かす力を持つようなハイクラス層のビジネスマンたちに訴求力を持つとされている雑誌の打ち出す価値観が、これだということだ。

 件の広告タイトルにも冠されている、「美人秘書」という女性を記号化するような表現に、ピンとくる若者はもういないだろう。さらに、美人を使って男性の虚栄心を煽るという構図も、輪をかけて古い。平成も終わろうとする現在、この広告を読んで「ダイナースカードを持とう」と思う「若い」男性読者がいるとすれば、かなり奇特な存在だろう。だが、同誌の購読ターゲットは、そういう男性なのだ。「GOETHE」は「美人秘書」が大好きであり、しばしば美人秘書特集も組む。

 この炎上広告を見ても違和感を抱かず、「クレジットカードでマウント取るとかダサい」とシラけない層が、つまりクレジットカードでマウントを取るような層が、「GOETHE」の読者である。今は女性だって、自分の力で稼いで好きなものを買い、好きなものを食べることができる時代だが、カードで男の価値を値踏みするような女と、それを疑問視しない男の雑誌が「GOETHE」ということだろう。

 ダイナースカード自体は、半世紀以上の歴史と伝統、そして社会的信用のあるカードだ。今回の炎上広告は、自分たちがこれまで獲得してきた価値観やセンスをいつまでも“当たり前”と信じることはやめ、再点検を繰り返すことが大事だと教えてくれる。

1 2

「ダイナースカードの広告炎上が孕む、何重にも頭の痛い構造の問題」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。