経済産業省が2016年に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、2030年には最も高位のシナリオで約79万人、最も低位のシナリオでも41万人のIT人材が不足すると試算されている。
「週刊東洋経済」2018年7月21日号(東洋経済新報社)のプログラミング教育特集において、転職情報サービスを提供する株式会社ビズリーチで事業本部長を務める酒井哲也氏が、「特定の業界というより、あらゆる業界で不足している」と、すでに様々な業界においてIT人材が不足している現状を指摘していたが、労働人口の減少を考慮すれば当然の成り行き。
政府与党は「労働力が足りない」とし、11月27日には入管法改正案が可決。いわゆる“単純労働”を含む特定分野の外国人労働者の受け入れを拡大させる方針だ。しかし建設工事や土木、警備など慢性的に人手不足の分野のみならず、今後はIT人材の不足も深刻化が予想されるということになる。
国としても指をくわえて見ているわけではない。教育現場のICT(情報・通信に関する技術)化を進め、ITに対応する人材を育成するための環境を整備してきた。
柴山昌彦文部科学大臣は11月22日、「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」を発表した。同プランは、「遠隔教育の推進による先進的な教育の実現」「先端技術の導入による教師の授業支援」「先端技術の活用のための環境整備」の3点を軸とし、<先端技術の活用によりすべての児童生徒に対して質の高い教育を実現することを目指します>と掲げている。
これはどういうことか、ひとつずつ見ていこう。まず、「遠隔教育の推進による先進的な教育の実現」とは、小規模学校や離島など様々な状況に対応した教育の充実化や、病気療養や不登校の児童への支援を目的とした“遠隔授業”を2020年代の早期に全ての小中高校に導入するというもの。
次に、「先端技術の導入による教師の授業支援」は、ビッグデータを活用して児童の学習状況に応じたきめ細やかな指導のサポートや、教員の指導力の分析や研究などを行い、授業の質の改善を図るようだ。
最後の「先端技術の活用のための環境整備」は、教育現場のICT化の促進や、関係省庁が大学などと連携して先端技術導入のための環境構築するものとしている。
「柴山・学びの革新プラン」では、ICTを活用した遠隔授業をすでに導入している、長野県喬木村・喬木第二小学校(児童数54人、長野県喬木村)の事例を取り上げた。<総合的な学習の時間において、各校でグループごとに村の魅力を研究し、お互いに発表し合う機会を設けることで、数名の小規模学級でも多様な意見に触れ、考えを深める機会を創出>と、その効果を紹介している。
生まれ育った地域により教育の機会に格差が生じていることが問題になっているが、このような遠隔授業の導入は、格差解消の一助となる。さらに、あらゆる事情によって学校に行って授業を受けられない、受けたくない児童にとっても学習環境の獲得につながりそうだ。
また、児童の学習面でのつまづきがビックデータによって分かれば、教員も適切なアプローチを講じることができ、児童の学力の底上げにも貢献するだろう。
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