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あなたは、「学校の教員には残業代が出ない」ことを知っているだろうか?
名古屋大学大学院で准教授を務める内田良氏は11月25日、ヤフーニュース内の連載「リスク・リポート」にて、「公務員教員に残業代がないことを知っている人の割合 」に関する調査結果を掲載。公務員教員は長時間労働かつ残業代のない働き方を強いられているが、そのことを知っている人は多くはないことを明らかにした。
公立校の教員は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)により、残業代の代わりに月給の4%が「教職調整額」という名目で支給されているため、教員はいくら残業したところで給与には一切反映されない。
「残業代が支給されない」以外にも、教員がいかに理不尽かつ過酷な労働環境で働かされていることは、口コミで広がりつつある。ツイッター上では現在、そんな環境下で疲弊している教員の悲痛な叫びが「#先生死ぬかも」というハッシュタグとともに、次々と投稿されている。
3割以上が過労死ライン
長時間労働を強いられている教員、またその姿を近くで見てきた人の意見は、かなり重いものだ。
新卒で高校教員になり、4月から無我夢中で働きました。初任研、校務分掌、担任業務、部活指導、他雑務に追われ、授業準備は一番最後。それでも授業は手を抜きたくない。その結果、毎月余裕で100時間を超える時間外勤務。10月に「適応障害」の診断を以てドクターストップとなりました。#先生死ぬかも
— A先生(初任・病休中) (@hi_sch_shonin) 2018年11月25日
小学生の放課後支援をしていた時。
下校時刻には延長以外、生徒も支援員も帰ります。
が、煌々と電気がついた職員室はいよいよ活気に満ち先生方は皆、机に向かっておられる。毎日のように。
ご自身とお子様の夕飯は。家族の時間は。余暇という言葉をご存知か。と心傷めておりました。#先生死ぬかも— 鈴木ゆう子 (@gloriayuko) 2018年11月22日
日本労働組合総連合会が今年10月に実施した、「教員の勤務時間に関するアンケート」によると、公立校の教員を対象に実施した月曜日~金曜日の学校内での総労働時間について、「60時間~65時間未満」(19.4%)、「65時間~70時間未満」(3.5%)、「70時間以上」(6.8%)との回答が得られ、約3割の教員が過労死ラインとされる週60時間以上で働いていることが判った。中学校の教員に限っていえば、約半数の48.3%もの教員が過労死ラインに立たされている。
また、大手広告代理店・電通に新入社員として入社し、2015年末に過労自殺した高橋まつりさん(当時24歳)の母・高橋幸美さんは、“過労死ゼロの社会”を目指し、教員の過労についても次のように訴えている。
#先生死ぬかも#中教審
事実たくさんの先生が過労で死んでいます
子供のために24時間対応を求められ良い教育や良い指導や部活の結果を求められる
教師もひとりの人
全ての職場で例外なく人権ある働き方を
教員の残業時間を認めない給特法に変形労働時間制の導入も不適切、根本的な改善になりません https://t.co/DKVZITl06p— 高橋 幸美 (@yuki843003) 2018年11月26日
今年4月、毎日新聞が地方公務員災害補償基金に取材を行った記事によると、2016年度までの10年間で過労死認定された公立校の教員数は63人にものぼったという。しかし専門家は、「他業種との比較は難しいが、認定申請すらできずに泣き寝入りしている遺族も多く、認定されたのは氷山の一角。政府は早急に実態を把握すべきだ」と、警鐘を鳴らす。
教育現場に精通する藤川伸治氏の著書『熱血教員が過労死する本当の理由』には、次のような記述がある。
<過労死した遺族が公務災害認定を行っても、裁判に訴えても認められる事例は少ない。なぜなら、教員は、原則として、勤務時間内で仕事を終え、勤務終了後の仕事のほとんどは、ボランティアとみなす給特法(きゅうとくほう)という法律があるからだ。この法律の壁に跳ね返され、「公務災害とは認められない」と判示され、泣き崩れる遺族の姿を見るたびに、自分の非力と深い挫折を感じ、涙が止まらなかった。>
しかし、教員は過労で倒れても泣き寝入りせざるを得ないという実態も、世間的には認識されていないのではないか。
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