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隠された日米通商交渉の衝撃度~日産ゴーン逮捕の背景にトランプの思惑か

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写真:AFP/アフロ 今年9月に行われた日米首脳会談の様子

「良好な日米関係」が通じない

 日米通商交渉が始まっていますが、日本政府が発表した情報には現実を隠ぺいした部分があり、政府の説明とは異なって、かなりの衝撃を覚悟しなければならないように見えます。もともと、日本政府は、腕力や声の大きさの違いを理由に日米二国間交渉に否定的な立場で、だからこそ12カ国による環太平洋連携協定(TPP)の枠組みに米国を取り込もうとしてきました。

 しかし、トランプ大統領の登場でこの計画は頓挫。米国から改めて日米二国間交渉を求められ、日本はこれを受け入れざるを得なくなりました。安倍総理はトランプ大統領の就任当初から米国詣でに励み、「日米はこれまでになく良好な関係にある」と述べて、両首脳の厚い信頼関係を強調してきました。

 政府は日米交渉の対象は物品に限るとし、日本製自動車への関税賦課も交渉期間中は留保される点を強調。安倍総理も「日米通商交渉では日本の国益に反することはしない」と、大見得を切りました。しかし、日米首脳が並んで会見する場で、トランプ大統領から「成果を示さなければどうなるかわかっているな」と耳元でささやかれるなど、2人の信頼関係は、少なくとも通商交渉の場では通じないことを示唆していました。

 トランプ大統領にしてみれば、米国は巨大な貿易赤字で外国に生産雇用機会を奪われているとの認識を持ち、年間7兆円もの対米黒字を出す日本は、中国に次ぐ重大犯と見られています。その巨大黒字を生み出す主犯が自動車だとして、日本に対米自動車輸出を減らし、米国での現地生産にシフトするよう求めていました。実際、7兆円の対米黒字のうち、4兆6000億円が自動車の捻出によります。

阿達参議院議員の衝撃的暴露

 多くの日本人が、来年の日米通商交渉は穏便に運ぶとの期待を持ち、自動車への関税もしばらくは留保されると安心していました。しかし、参議院自民党の阿達雅志国土交通大臣政務官が、ロイター通信主催のパーティでそんな期待を打ち砕く衝撃発言をしました。来年本格化する日米交渉で、日本の自動車メーカーは最大100万台の輸出削減を求められることを暴露したのです。

 昨年1年間の対米輸出台数は174万台だったので、100万台減らせば、対米輸出は半分以下になってしまいます。それだけ大幅な輸出減少を、短期間で米国での現地生産に置き換えることはとてもできません。対米輸出依存度の高いメーカーには死活問題となります。自動車だけで4兆円以上の対米輸出を減らすとなれば、自動車業界のみならず、日本の景気全体にも大きな打撃になります。

 自動車業界は部品など、関連企業や下請け企業のすそ野が広く、自動車メーカーが輸出を減らし、生産減につながれば、部品メーカーまで含めると巨大な需要減少となります。4兆円分以上の対米輸出削減となれば、すそ野までの影響を考えると5兆円を優に超える生産の減少が生じ、年間540兆円余りの日本のGDP(国内総生産)は1%以上減少する可能性があります。

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斎藤満

一橋大学経済学部卒業(竹中平蔵元大臣と同じクラブで活動)。1975年4月 三和銀行入行。85年、三和総合研究所調査部主任研究員。90年、三和銀行資金為替部ニューヨーク駐在エコノミスト。2001年9月、WTCにて「9.11同時多発テロ」に遭遇。著書に『ドル落城~ついに日本経済が目を覚ます』(2003年、講談社)、共訳著にジョセフ・サックス『レンブラントでダーツ遊びとは』(2001年、都留重人監訳、岩波書店)などがある。

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