なぜ中高年は、『ボヘミアン・ラプソディ』のラストシーンで涙するのか

【この記事のキーワード】

なぜ酷評されたのに大ヒットしたのか?

 映画ヒットの要因は何か? なぜ観客は涙するのか?

 「そりゃ、クイーンが伝説的バンドだからさ」「クイーンそっくりの俳優たちが演じたからだよ」

 こんなコメントで片付けてしまっては、本質が見えてこない。「勝ちに不思議の勝ちあり」の通り、不思議なラッキーパンチで終わってしまう。

 大衆=マーケットに支えられた要因が必ずあるはずだ。

 拙著『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社)では、マーケティング戦略の公式を次のように紹介している。

マーケティング戦略=ターゲット×提供価値

 その公式から、ヒットの要因を探してみよう。

酷評された3つの理由

 映画封切り前は、プロ評論家から酷評されたが、考えてみれば無理もない。「敗北」するための素材はごまんとある。まず「新しさ」がない点だ。

 第一に、タイトルとなったクイーンの代表曲『ボヘミアン・ラプソディ』が、そのリリースされたのは1975年。実に43年前、半世紀前の曲だ。懐メロと言われても仕方がないくらい過去の曲だ。

 第二に、メンバーの年齢である。すでにこの世を去ったフレディ・マーキュリーを除いた3人のメンバーは、70代に差し掛かるおじいちゃんである。45歳で逝去したフレディ・マーキュリー(1946年9月6日生まれ)が、もし生きていたら “マチャアキ”こと堺正章(1946年6月6日)と同じ年だ。

 “マチャアキ”だって、1970年代にはグループサウンズで大衆を熱狂させていたことはある。けれども、当時の熱狂を再び観たいというファンは少ないだろう。比較対象が少々乱暴かもしれないが、封切り前に「金まで出してまで、カリスマおじいちゃんの若い頃を観たいものかね?」と問い詰められたら、スゴスゴと企画を引っ込めたくならないだろうか。

 第三に、ストーリーに新しさがないことだ。フレディ・マーキュリーがエイズで亡くなったことは、ファンなら誰もが知っている。映画のクライマックスのライブエイドの映像は、YouTubeでタダで観ることができる。「新規性がない既知のストーリーに対して、映画館に足を運ぶ人はいるか」と問われれば、こちらも下を向いてしまいそうだ。

 上記は筆者の推測にしか過ぎないが、封切り前にこんな反対意見もあったであろう。しかし、映画はそれらの障害を乗り越えて、大ヒットという成果を残した。

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