なぜ中高年は、『ボヘミアン・ラプソディ』のラストシーンで涙するのか

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勝因は「NEW&OLD」

 果たして、その勝因は何か? 観客を感涙させた要因は何か?  マーケティング戦略の公式を再掲し、筆者の仮説を展開してみよう。

 マーケティング戦略=ターゲット×提供価値

 マーケティングの一丁目一番地、最優先事項、決め手は「ターゲティング」だ。つまり対象を決めると、後はすべて決まってくる。まずは「ターゲット」。メインターゲットは、一言で言うと「2018年現在の中高年世代」。言い換えれば、クイーン最盛期にアルバムを聴いていた世代だ。

 クイーンの最盛期が1980年代とすると、その時代にティーンエイジャーだった世代は、現在40代〜60代に相当する。ここの世代は、日本では1973年(現在45歳)をピークとするベビーブームピークとも重なっているため、人口が多い。

 10代に聴いた音楽は耳にも残りやすい。巨大なマーケットに受け入れられる素地がある。

 次に「提供価値」。

 「ターゲット」に向けて、「何を提供価値」にするか?

 筆者は、本映画の提供価値は、「NEW&OLD」だと分析する。「NEW(知られざる舞台裏)+OLD(懐かしい楽曲)」がターゲットに突き刺さっているのだ。

 NEWとしての舞台裏は、次の3点だ。

1)“マイノリティ”としての苦悩

イギリスでは少数派の出自、同性愛者としての苦悩。

2)“バンドメンバー”との苦悩

カリスマであるフレディと3人のメンバーの対立と融和。

3)“残された命”としての苦悩

エイズによる余命の短さとボーカリストとしての限界

 これらは、ターゲットがすでに知っている点だが、同行取材のような形で、知られざる苦悩(舞台裏)を覗き見ることができる。これが、新しさ「NEW(知られざる舞台裏)」につながっている。

 そして、「NEW(舞台裏)」進行の脇役として、「OLD(懐かしい楽曲)」が伴奏される。観客が若い頃耳にした楽曲でノスタルジー(郷愁)を掻き立てられながら、フレディの苦悩を理解できる中高年として、クイーンの同行取材に立ち会っている気分になれる。

勝利の裏には、巧みなマーケティング戦略がある

 筆者は、鑑賞前に同世代の知人が「最後のライブステージシーンで涙した」とSNS投稿したのを見て、疑念が消えなかった。友人が泣いたと言っているライブステージは、YouTubeで何度も観ているからだ。

 ところが、実際に映画を観ると、YouTubeとはまるで景色が異なって観えた。いや、映画のステージは、YouTubeの実写映像をほぼ完全に再現している。それなのに、まったく異なって見える。それは演者たるクイーンに感情移入しているからだ。フレディ、そしてクイーンメンバーの苦悩に寄り添い、ステージの横から、前から、後ろから圧巻のパフォーマンスに付き添ったからにほかならない。

 その戦略に華を添えたのが、クイーンのメンバーに瓜二つの俳優たちである。大きな幹となるマーケティング戦略に、俳優たちが見事な華を咲かせたのである。主役のフレディも話題となっているが、ギターのブライアン・メイは本人そのものだ。

 勝利の裏には、巧みなマーケティング戦略がある。それを見ずして、不思議なラッキーパンチとして片付けてしまっては、オトナの仕事スタヰルとしてはもったいない。

 理性的に映画を分析してみたが、映画のほうは直感的にガツンと来る。これから観る方はIMAX劇場をオススメする。IMAXにして良かったと思える数少ない作品だ。

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