劇場へ足を運んだ観客と出演者だけが共有することができる、その場限りのエンターテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆な表現が可能です。
ある作品での好演が高評価を博し、次の出演を呼びこむことは、観客にとっても演者にとっても幸せなことです。昨年、初めての主演ミュージカル『キャバレー』に挑戦し(「高い身体能力、太い声! 長澤まさみが初主演ミュージカル『キャバレー』で花開かせた、セクシー以外の魅力」)、大胆なセクシーさとともに、歌やダンスのうまさで目の肥えた演劇ファンや関係者をも驚かせた長澤まさみが、まさに今、舞台の世界でその幸せなサイクルの真っただ中にいます。
近未来⇔1980年代が舞台
大好評を博した『キャバレー』の次に選び、そして選ばれた舞台は“もっともチケットのとれない劇団”といわれる「劇団☆新感線」の『メタルマクベス』。シェイクスピアの代表作『マクベス』を原作に、宮藤官九郎が脚本を手掛けており、長澤はシェイクスピア世界で屈指の悪女、マクベス夫人役を熱演しています。
『メタルマクベス』では、荒廃した近未来の世界と1980年代日本のメタルバンドが舞台。戦争のせいで世界は破壊され戦国時代となった2218年、無敵の将軍ランダムスターは親友のエクスプローラーとともに敵を打ち破り、国王と王子、国王の側近グレコの待つ国への帰還途中で魔女に出会います。
魔女はランダムスターのことを「マクベス」と呼び、いずれは王になると呼びかけて、80年代のヘビメタバンド「メタルマクベス」のCDを差し出します。そのジャケット写真に写ったメンバーの顔は、ランダムスターとエクスプローラー、そしてグレコにそっくり。