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長澤まさみ、舞台女優としての快進撃! 劇団☆新感線「メタルマクベス」でリアルな悪女像

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 次第に狂っていくランダムスター夫人の哀れさをひと際感じさせたのも、長澤ならではの魅力でした。幻覚による奇行よりも夫人の狂気を強く感じさせたのは、『キャバレー』ではとてもチャーミングだった、口角のキュっとあがった笑顔。正常な精神ではないことが表現され、これまたリアルでした。

 夫人は狂って自死し、ランダムスターもまた破滅を迎えます。近未来とバンドの二重構造は突飛なギミックにも思えますが、バンドファンを「魔女」と名付けているのはとても意味深。魔女はランダムスターが王位に就くと告げはしましたが、その後に待つ破滅については、勘違いさせるような文言で述べています。それは、芸能人のささいな言動でアンチが騒ぎ、活動休止に陥らせような事態が起きる現代の様相と、どこか共通しているようにも見て取れます。

 シェイクスピアと宮藤官九郎が言いたいこと。それは、人間は信じたいことを信じたいようにしか受け止めない、ということかもしれません。

 シェイクスピア俳優というと、とにかく重厚で格調高く、というイメージがありますが、長澤まさみの演じたランダムスター夫人の等身大の女性像も、まぎれもなく「マクベス夫人」。ミュージカル女優に加えて魅力的なシェイクスピア女優という評価も、長澤は手にしたといってもいいのでは。それは、信じたいものしか見えない人間の性かもしれませんが、生で目にして覚えた感動は嘘ではないのも、また人間の心理のひとつのはずなのです。

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