アンカリング効果の注意点
ここまで、自己評価にアンカリング効果を使うことによって、同じ成果でも評価を変えることができる可能性についてお伝えしました。しかし、読者の方々の中には、「アンカリングが働き、評価が1段階しか変わらないのならば、どのような場合でも『5』を自己評価にすれば良いのではないか?」と思われた方もいらっしゃるかと思います。確かに、アンカリングという観点からすれば、高い値を書いておくことが効果的になりますが、まったくできていないのに「5」と言い張ると、「この人は自己評価ができない人なのだな」と、無用な否定をされることにつながりかねません。何事もやり過ぎは禁物です。
まとめ
・人間には、直前に見た数字で評価が変わる「アンカリング」という作用がある
・自分の思う評価より少し上を自己評価にしておくと良い
・アンカリングのやり過ぎには要注意
すでに管理職になったあなた・人事部のあなたへ
最後に、読者の中には、評価をしたり、評価制度を作ったりする側の方もいらっしゃると思いますので、アンカリングを避けるための方法をお伝えしておきます。
アンカリングを回避するための手っ取り早い方法は、自己評価制度をなくしてしまうことです。そうすれば、そもそもアンカーになることがなくなります。今すぐ人事制度を変えるのが難しいのなら、「部下の自己評価を聞く前に、管理職が先に評価を仮登録してしまう」という運用にすれば良いでしょう。そして、部下の自己評価を参考に、管理職自身が仮評価を修正して最終決定するようにすれば良いのです。それによって、部下の評価ではなく上司自身の評価をアンカーにすることができるからです。
1 2