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ZOZO前澤社長「納税します」発言からの大論争、富裕層への課税議論で致命的に欠けている視点

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Thinkstock/Photo by castillodominici

 ファッション通販サイトZOZOの前澤友作社長のツイートをきっかけに、富の再配分についてネット上で論争となっている。こうした論争はたいていの場合、平行線となるのだが、その理由は、富が十分にあることを前提に「奪い合い」という図式で物事を考えてしまうからだ。

 だが日本が直面している現実は、豊富な富を誰が受け取るのかではなく、富そのものが少なくなっているという非常に厳しいものである。この点を理解しないと、再配分の議論はうまくいかない。

制度上は低所得者優遇なのに貧困が多いのはナゼ?

 前澤氏は2018年10月、自らのツイッターで「買い物もするけど、税金もしっかり納めております。これからももっと稼いでいっぱい買い物して、いっぱい納税します!」とつぶやいた。これに対してNPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏が、「高所得者は厚遇されている」「税が安すぎる」と発言。富裕層の課税についてネット上で論争となった。

 日本の所得税は典型的な累進課税となっており、所得が多いほど税率が高くなる。表面上は年収4000万円超の場合、45%の課税となるので、稼いだお金の約半分が税金で徴収されることになる(実際には控除があるので、もう少し少ないが)。ここまで高い累進課税を採用している国は少なく、表面的に見れば、明らかにお金持ちからむしり取る税制といってよい。

 一方で、実際に納税されたデータから分析すると、年収500万円以下の人の所得税率は1%台と事実上の「無税」となっている。諸外国では年収が低くてもしっかり税金は取られるので、この点からしても、日本は低所得者に極めて優しい仕組みになっている。「年収800万円以下の人は、払ったお金よりも、国から受けるサービスの方が多い」という高所得者側の主張も、おおむね事実といってよいだろう。

 ところが、制度上は低所得者に優しいはずなのに、日本は先進国の中でも突出して貧困率が高い。日本の相対的貧困率は15%程度だが、欧州各国は軒並み1ケタ台であり、先進国で日本と同水準なのは米国だけである。これだけの累進課税制度を持っていながら、徹底的な弱肉強食の国である米国と貧困率が同じという驚くべき結果になっている。

 つまり得られている結果からのみ判断した場合、「庶民は貧しいので、富裕層にもっと課税しろ」という主張と「富裕層は税金を払い過ぎている」という主張は両方正しいということになる。これでは再配分の議論が平行線となるのも無理はない。

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