ZOZO前澤社長「納税します」発言からの大論争、富裕層への課税議論で致命的に欠けている視点

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日本は長時間労働で富を稼いでいる

 では、日本は低所得者に優しい税制であるにもかかわらず、なぜここまで貧しいのだろうか。その最大の理由は、身もフタもない話なのだが、低所得者に再配分するだけの原資を経済全体で稼げていないからである。

 このところ働き方改革に焦点が当たるようになり、日本の労働生産性について議論される機会が増えてきた。日本の労働生産性は、欧米各国の半分から3分の2程度しかない。つまり日本経済そのものが低付加価値であり、欧米各国と比較して富の絶対量が少ないのである。

 米国やドイツ、英国などが大きく稼いでいるのはイメージ通りかもしれないが、欧米各国の中では稼ぎが悪いとされているイタリアですら、日本と比較するとかなり豊かである。

 イタリアの1人あたりGDP(国内総生産)は日本とほぼ同レベルで欧米各国の中ではかなり低いのだが、その理由は生産性が低いのではなく、単に働かないからである。

 日本の全人口に占める就業者の割合は50%を超えている。これは幼児や老人も含めた中での数字なので、人口の50%以上が働いているということは、成人のほとんどが就労していることを意味する。つまり日本では、働ける人はほぼ全員、労働に参加することで今の富を得ているという計算になる。

 一方、イタリアの全人口に占める就業者の割合はわずか37%しかない。イタリアの場合、統計に出ない労働が多いという可能性はあるが、それにしても多くの人が働いていないのは事実である。逆に言えば、働いている人の生産性は極めて高い。

 世界ランクが落ちたとはいえ、日本の1人あたりのGDPはそれなりに高いが、全員が長時間労働することで何とか稼ぎ出しているというのが現実である。この状況を根本的に変えなければ、富の再配分は難しいと考えたほうがよいだろう。

年金が減額されるので株価を下げられない

 前澤氏のツイートを批判した藤田氏は、株式や債券など資産運用から得られる富への課税を強化するよう求めている。しかし、仮に日本だけ配当に対する課税を強化すれば、株価に悪影響を及ぼしてしまうため、現実的には導入は困難だ。

 多くの人は、株が下がってもよいではないかと考えるかもしれないが、日本の場合はそうはいかない。

 あまり知られていないことだが、私たちの年金積立金のほとんどは、なんと株式で運用されている。つまり株価が下がってしまうと、年金が減額されてしまうリスクがあるのだ。なぜそうなっているのかというと、そうしなければ年金の維持が難しいからである。

 日本の公的年金は、現役世代から徴収する保険料よりも高齢者に支払う年金額が上回るという慢性的な赤字財政となっており、このままでは制度の維持が困難になる。

 かつて公的年金の運用は、安全第一ということで債券での運用が中心だったが、安倍政権は年金財政の赤字を穴埋めするため、公的年金の株式シフトを一気に進めた。公的年金の運用をリスクの高い株式で行っている国はほとんど例がない。つまり、日本は社会保障制度を維持するため、かなり危険なことまでしなければならないほど、経済的に追い詰められているのだ。

 今の日本企業の大株主は、いわゆる資本家ではない。わたしたちの年金なのだ。当然のことながら、株価が下がるような政策は基本的に実施できないと思ったほうがよい。

 では、日本の生産性を高め、再配分の原資を稼ぎ出すためには、どうすればよいのだろうか。当たり前すぎる話だが、日本のGDPを欧米並みに拡大するしか方法はない。

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