
『生田家の朝』日本テレビ公式ページより
福山からのラブコールで生まれたバカリズムとのコンビ
ミュージシャンで俳優の福山雅治が、企画プロデュースと主題歌を手がけた話題のドラマ『生田家の朝』(月曜~金曜朝7時50分ごろ『ZIP』内で放送)このドラマは、日本テレビの開局65周年を記念した画期的な「新しいドラマ」である。脚本を担当するのは向田邦子賞受賞の記憶が新しいバカリズム。福山の「一緒にものづくりがしたい」という熱いラブコールにより、2人のタッグが実現した。
本作品は、生田浩介(ユースケ・サンタマリア)と妻の早苗(尾野真千子)が、2人の子どもたちである美菜(関谷瑠紀)、悟(鳥越壮真)と織り成す日常を描いたドラマ。物語の中に「食べ物を扱う」というアイデアを出した福山は、バカリズムの実家が弁当屋であることをヒントに、物語の設定を膨らませていったそうだ。「食べ物が出てくるドラマになるといいね、みたいなところから始まったんです」と語っている。自身が担当した主題歌については「日本の朝を支えているのはママなんじゃないかっていうメッセージを、この楽曲に込めさせていただきました」と、尾野が演じる早苗を軸に楽曲を手がけたことを明かした。
脚本家バカリズムのホームドラマへの挑戦
福山より「常に仕事をしていきたいクリエイターNo1」と絶賛されたバカリズムは、日本映画学校在学中、升野・松下によってお笑いコンビ「バカリズム」を結成。多くの番組に出演し認知度を広めていたが、突如松下から引退の申し出があり、それを承認したため、升野一人でバカリズムを継続することとなった。解散後はすぐに『R-1ぐらんぷり2006』に初出場し、単独での活動開始からわずか3カ月後に決勝進出を果たす。『R-1』には2006年から5年連続で出場、4度の決勝進出を成し遂げた。
脚本家としては、2014年10月より放送を開始したドラマ『素敵な選TAXI』で連続ドラマの脚本を初めて担当、役者としても出演している。これがきっかけとなり、単発ドラマ『かもしれない女優たち』、4夜連続SPドラマ『桜坂近辺物語』(すべてフジテレビ系列)の脚本を手がけることになる。その後もクリエイターとしての躍進は続き、2016年秋には『黒い十人の女』、『住住』、『架空OL日記』(いずれも日本テレビ系列)と3クール連続で連ドラの脚本を担当。自身が女装して主演した『架空OL日記』では、第36回向田邦子賞を受賞するという快挙を果たした。
家族の平和な日常を描く『生田家の朝』はホームドラマの数が減少している現在、とても貴重な作品だ。「不倫」をテーマにした内容や、奇抜なキャラクターが登場する作品が脚光を浴びている最近のドラマ界。オリジナル脚本のドラマは減少し、漫画や小説を実写化した作品が目立っている。確かに実写化作品は話題性があるし、自分にとって思い入れの強い作品のドラマ化が決定すると、完成が待ち遠しいとさえ思う時もある。しかし、描いているイメージと配役に違いがありすぎると途端に見る気が失せるという難点も。私は過去に何回かガッカリさせられた経験がある。
テレビ離れが囁かれ、若い世代の意識がYouTubeに向けられている昨今、視聴率を獲得することは至難の業なのだろう。コアなファンや、作品に興味を持つ層をターゲットにして安全策に走ってしまうのは仕方ないことなのかもしれない。しかし、そんな苦しい状況の中、NHKでお馴染みの「朝ドラ」を日本テレビが手がけるという斬新な企画が決定。しかもプロデュ-スはあの福山雅治! オリジナル脚本を担当するのは鬼才・バカリズムだというではないか。これはもう、期待するしかない。
バカリズムは「どこにでもいそうな家族のどこにでも起こりそうな出来事を題材にしているので、特に大きな事件もどんでん返しも起こりませんが、たぶん面白いんじゃないかなと思います」とコメント。淡々とした日常を独自の切り口で描き、視聴者を釘付けにしてきたバカリズム。今作では我々をどんな世界に連れていってくれるのだろうか。寒さが厳しい季節だが、朝起きるのが楽しみになりそうだ。
バカリズムが『架空OL日記』で、抑圧されたOLたちのゆるやかな女子の連帯を描けた理由 西森路代×清田隆之(桃山商事)
今年4~6月に放映されたドラマ『架空OL日記』(日本テレビ系)は、バカリズムが脚本・主演をつとめた新世代のOL物語だった。郊外の銀行に勤める5人の女子た…
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