雇用のミスマッチを表す「均衡失業率」と「需要不足失業率」の乖離
独立行政法人労働政策研究・研修機構の『均衡失業率、需要不足失業率』の統計を見ても、興味深い数字が出てくる。
2018年9月の完全失業率は2.34%。そして注目すべきは、「均衡失業率」の2.81と、「需要不足失業率」の-0.47という数値だ。
まず、完全失業率だが、これは労働人口のうち、職が決まらずに求職活動をしている最中の人の割合を示している。人手不足なのに、一定数の人が求職活動から解放されていないのだ。
そこで、この謎解きのヒントとなるのが、「均衡失業率」と「需要不足失業率」だ。「均衡失業率」は別名「ミスマッチ失業率」とも呼ばれている。世間に仕事はあるのに、仕事内容や待遇に対して納得できないために職に就いていない人の割合を示している。
一方、「需要不足失業率」は、どんな仕事でもいいから(つまり仕事を選ばずに)働きたいのに職に就けない人の割合だ。
繰り返しになるが、「均衡失業率」が2.81、「需要不足失業率」が-0.47という数値となっている。つまり、「均衡失業率」のほうが高いのだ。これは、「求人はあるが、希望とマッチしていないので失業してしまっている」人が数値を持ち上げていることになる。そう、仕事と求職者のミスマッチこそが、失業率を上げていたという可能性が浮かび上がってきた。
人手不足の偏り
内閣府『人手不足感の高まりについて』の「ハローワーク・職業別の「有効求人-有効求職」によると、職種による偏りが顕著なことも見えてくる。
介護や食品販売、飲食料の調理、接客業などでは有効求人数、つまり募集側が圧倒的に超過しており、応募希望者がいないことがわかる。
一方、一般事務などでは有効求職者数が超過している。つまり、職業により、人材を求めている側と就職したい側にミスマッチが生じているのだ。
同資料の「民間職業紹介・職業別の転職市場における求人倍率」を見ると、圧倒的に求人倍率が高いのは、インターネット専門職や建設エンジニア、組込・制御ソフトウエア開発エンジニアなど高度のスキルが要求される職業だ。
一方、圧倒的に求人倍率が低いのがオフィスワークである。つまり、稼ぎたいと思ったら、求人倍率もスキルも高いインターネット専門職や建設エンジニア、組込・制御ソフトウエア開発エンジニアなどの職に就けばよいわけだ。
逆に、高度なスキルが養成されない(語弊があるかもしれないが誰でもできる平凡な)オフィスワークは人材が足りているため、高い給料を払わなくても人が集まると考えられる。
スキルがそれほど必要ではない仕事は、固定費で賄うよりも必要に応じてアウトソーシングしたり、あるいは機械化や外国人労働者で賄ったりすることも検討されやすいだろう。
一方、介護や接客など、人気がない仕事は、求人が多い。
以上のことを整理すると、こうなる。
① 誰でもできるが給料が低い仕事
→求人が少ない(事務職など)
② 高度で給料が高い仕事
→求人が多い(専門職など)
③ 人気がなく給料が低い仕事
→求人が多い(介護・接客など)
このことから、平凡な仕事で稼ぐことは難しいため、高度な知的産業に従事するか、人が嫌がる(もちろん、好む人もいる)が、あまり稼げない仕事のいずれしか選べないような時代になっていることがわかる。