“出戻り” OKの「再入社制度」増加で働き方は柔軟に、雇用の流動性も高まる

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 11月30日に厚生労働省が発表した10月の有効求人倍率は1.62倍で、8カ月ぶりに低下したものの、なお高水準の結果となった。労働者にとっては雇用のチャンスが増える良きニュースだが、その一方で企業側は「人手不足倒産」への危機感をつのらせているようだ。

 エン・ジャパン株式会社の調査によれば、転職コンサルタントの4割が、「転職者が悪質な引き止め(ハラスメント)に遭遇した」と回答している。あの手この手で人材流出を阻止しようとする企業は多いようだ。しかし逆転の発想で、辞めた従業員の“出戻り”制度を導入する企業も増えている。

 パナソニック株式会社は今月、「再入社制度」の拡大を発表した。従来のジョブリターン(再雇用)に加えて、一度入社したあとに別のキャリア経験を積み、再びパナソニックに戻る、いわゆる“出戻り”キャリアを広く受け入れるという。人手不足対策の一環ではあるが、従業員の柔軟なキャリア形成を後押しする狙いもあるという。

 病児保育や障害児保育園を展開する認定NPO法人フローレンスでは今年10月、再入社制度「サーモンチケット」の運用を開始している。同制度は、退社日の翌日から3年以内であれば、「期間に定めのない労働契約であったこと」「自己都合の退職であること」「勤続1年以上の退職であること」という3つの条件を満たした元従業員が再入社を希望した場合、採用選考に進めるというものだ。「サーモンチケット」というネーミングには、「鮭のように戻ってきてね」という思いが込められているという。

 ソフトウェア開発を展開するサイボウズ株式会社でも、35歳以下のエンジニアやスタッフを対象に、転職や留学など環境を変えて自分を成長させることを目的とする「育自分休暇」を導入しており、退職から最長6年間は復帰が可能となる。

 まったく新しい環境で可能性を試したくとも、失敗のリスクを恐れて転職に踏み切れない人は少なくない。しかし再入社制度が普及すれば、労働者は転職にも積極的になり、キャリアをより豊かにできる可能性が高まるだろう。企業にとっても、社員をより広義の意味で“育てる”視点を持つことは、巡りめぐって自社の優秀な人材確保にもつながる可能性が生まれる。

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