横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手が、「週刊文春」2018年12月6日号(文藝春秋)で取材に応じ、「勝利至上主義」が野球界で蔓延している現状への危機感を語っていた。現在の少年野球は勝つことに価値を置きすぎているとして、筒香選手は<子供たちにとって楽しいはずの野球が、そうではなくなってしまっているのが、すごく気がかりです。子供たちが大人の顔色を見てプレーするようになってしまっています。>と“野球を楽しむ”という視点が蔑ろにされていると指摘した。
筒香嘉智選手が言うように、野球を心から楽しめている子供は少なくなっているのだろうか。下手だから楽しむことができない子供だけでなく、上手な子供でもそれは例外ではない――そう示唆する言葉は、別の選手からも出ている。
中日ドラゴンズで活躍している小笠原慎之介投手は高校時代、夏の甲子園決勝の仙台育英戦に登板し、チームを優勝に導いた。ただ、試合後のインタビューで、小笠原慎之介投手の口から発せられたコメントは非常に印象的だった。
<日本一になるために戦ってきて楽しい試合なんてない。苦しい試合ばかりだったけど、今日は初めて試合が楽しいと思えた>
後にプロに入るほどの逸材であれば、野球が好きで、小中高と野球を存分に楽しんできたのだろうとのイメージを抱く。しかし小笠原投手が楽しいと感じた試合は、甲子園決勝で勝利した試合のみ。この発言は、野球の得手不得手に関係なく、勝利至上主義が子供から野球の楽しさを奪っているという筒香嘉智選手の危機感を裏付けるものとなっている。
少子化に関係なく子供の野球離れは深刻
また、筒香嘉智選手は、<野球人口の減少が話題になって随分経ちますが、果たしてその原因は少子化だけなのか。もっと根本的な問題があり、日本の野球界はこのままではまずいなと感じていました。>と、子供達の野球離れを危惧している。
今年のプロ野球は天候不良が続いたが、観客動員数は前年よりも41万1256人増の2555万719人と過去最高を記録した。地上波での試合中継が少なくなった頃から「野球人気の低迷」が囁かれてはきたものの、球場に足を運ぶ人は年々増加している。しかし筒香嘉智選手が危惧する「野球離れ」は、すなわち「野球人口の減少」だ。
公益財団法人日本中学校体育連盟の調査によると、軟式野球部に所属する男性中学生は平成22年では29万人もいたが、平成29年では17万人に減少した。一概に「少子化の影響」と言えないのは、他のスポーツと比較した場合の減少幅が大きすぎるためだ。バスケットボール部は平成22年が17万人で、平成29年が16万人。サッカーは平成22年が22万人で、平成29年が21万人だ。男子中学生の競技人口では、サッカーが野球を上回っている。
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