筒香嘉智が子供達の野球離れを危惧 スポーツ界は勝利至上主義を捨てられるのか

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勝利至上主義だけでなく蔓延する体罰も原因か

 勝利至上主義だけでなく指導者からの体罰も、野球の競技人口減少に影響を与えているかもしれない。名古屋経済大学高蔵高校の野球部で元プロ野球選手の監督が部員に暴行したニュースは記憶に新しい。今年6月には、群馬県立大間々高校の野球部監督が複数の部員に体罰したとして、監督を退任していることが発覚した。今年10月にも、奈良市立一条高校で野球部監督を務める男性経論が部員に体罰を加えたり、暴言を吐いたりしたとして戒告処分が下されている。

 また、大阪府内の少年野球チームの監督が選手に暴力を振るう様子が撮影された動画が、動画投稿サイト「YouTube」にアップされ、大きな話題を呼んだ。今年だけでも指導者の体罰がこれだけ明るみになっているのだ。もちろん、野球というスポーツに限定した問題ではなく、広くスポーツ指導の場において問題意識を共有し改善すべきことは間違いないが、元プロ野球選手の桑田真澄氏はこの問題の根深さを著書で指摘している。

 ノンフィクション作家の佐山和夫氏の共著『スポーツの品格』(集英社新書)の中で、桑田真澄氏は体罰がなくならない原因を、こう分析している。いわく、指導者自身が体罰を受けて成長したため、体罰を否定すると自分自身も否定することに繋がる。そうなると、体罰をやめることができない――と。

スポーツ界は勝利至上主義を捨てられるのか

 一方で、勝利至上主義とは距離を置き、野球を純粋に楽しむことを普及させる取り組みは広まっている。甲子園出場経験もある青森県の私立高校・弘前聖愛高校野球部は、部員が弘前市内の保育園や幼稚園に足を運び、野球の楽しさを広める活動を行っている。石巻専修大学は先月、少年野球の普及を目指す「石巻野球フェスティバル」を開催し、同大学の野球部員が地元の小中学生にティーボールゲームやストラックアウト競技などを通じて野球の楽しさを伝えた。

 桑田真澄氏は前掲『スポーツの品格』で、勝利だけがスポーツの価値ではないと強く語っている。

<スポーツの楽しさは、勝つことだけではありません。自分なりの努力を続けること、小さな成功体験を積み重ねること、失敗してもまた挑戦するというチャレンジ精神……そういうすべての場面に、スポーツをやる楽しさや喜びがあるはずなんです。>

 子供の野球離れは深刻だが、前述したように勝利至上主義や体罰は野球に限った問題ではない。日大アメフト部のタックル問題からも分かるように、勝利至上主義にこだわりすぎたチームは非常に危険である。また、アスリートのセカンドキャリア問題や、成長期の選手の健康を害するほどのトレーニングなど、スポーツ周辺の課題は多い。とにかく勝つことを最優先事項としたスポーツのあり方は、各所で少しずつ見直されている。真剣勝負の世界であっても、まずはスポーツを「楽しむ」心を育むことが一番だろう。

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