文豪・谷崎潤一郎の「鉄道病」もパニック障害
――では、ストレスの多い現代社会だからこそ起こりやすい病気だ、ということは可能なのでしょうか?
岩波明 いえ、実はこれは昔からある病気です。ただ、昔は「不安神経症」と呼びました。有名な例では、作家の谷崎潤一郎でしょうか。1913(大正2)年に発表された『恐怖』という短編のなかに「鉄道病」というものが出てくるのですが、これは典型的なパニック障害ですね。
――精神の病というと、どうしてもひどいケースでは自殺につながっていく、というような心配もしてしまうのですが、その点はどうなのでしょうか?
岩波明 いえ、直接的にはないです。パニック障害の症状として希死念慮を伴うなどといったことはありません。もちろん、パニック障害にかかってしまったことによってうつ病を併発してしまった、などといったケースはあり得るでしょうが、パニック障害そのものが直接的に自殺につながっていく、といったようなことはないですよ。
「新型うつ」などといった、専門家の間では否定されているものが報道ではさも存在するかのように当たり前に登場する、といったことが精神医学分野ではたまにあります。しかしこのパニック障害に関しては、よく報道されるようになってすでに20~30年がたっていますし、ある程度正確な報道をされており、また一般的にも正確な理解をされているのではないかと思います。
先ほど申し上げた通り、精神科医から見れば非常によくある病気です。そういう意味でも、適切に治療することがとても大事ですね。
(構成/編集部)
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