蒼井優が不倫する女性を演じるとなぜこうも心を揺さぶられるのか 舞台「スカイライト」

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 作者のデイヴィッド・ヘアは、イギリス社会の(もっとも、往々にして世界のどこでも普遍的なことでもありますが)抱える欺瞞を鮮やかに切り取る作風で知られています。単純な善悪ではなくそのなかで苦悩する人々を描き、社会を構成するすべての人々が考え、担う課題であると提示しています。

「スカイライト」は本来なら、この資本主義における価値観も大きな側面となっている作品なのですが、個人的には、恋愛物語にしか見えませんでした。傲慢ではあっても、すでに破たんしているアリスとの夫婦生活を清算し、堂々とキラと人生を歩みたいと願うトムの気持ちは、まだ理解できるものです。しかしキラは、トムへの愛とアリスとの友情のどちらも大切にしていて、3人でいることこそが心の平穏という、不倫であることを除いても複雑なもの。恵まれない子どもたちのための献身も、立派ではあるけど、なぜそこまで固執するのか。

「魔性の女」と呼ばれる女優の絶妙なバランス感覚

 決して、誰もが共感できるわけではない人物像であるはずなのに、蒼井優が演じていると、なぜかキラの存在に納得できたのです。そうだよね、恋愛って本当に他人から見たらまったく理解できないものでも、自分のなかではそう成り立ってしまうものだよね、と。シチュエーションとしてはキラの置かれた環境は特殊なものですが、まるで自分の過去の恋愛体験をえぐらえているような感覚。

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蒼井優が不倫する女性を演じるとなぜこうも心を揺さぶられるのか 舞台「スカイライト」の画像1 ウェジー 2018.02.14

 恋愛一番で生きるのではなく、思想をこじらせてすぎてるわけでもない、絶妙なバランス感はどこからくるのか。演技派と(そしてプライベートでは魔性の女とも……)評されることの多い蒼井の技術だといえばそれまでなのですが、では他の演技派と呼ばれる女優が演じてもしっくりくるかといえばそうでもないようにも思えます。多分、蒼井優だからこその存在感なのでしょう。

 トムとキラは別れの朝を迎えますが、劇中には描かれないこの後、多分、また新しい形での愛情を育くむのかもしれない。ただ別離の切なさで終わらせないという余韻をかもしだすのも、蒼井の存在感ありのことのように思います。

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