消費税対策でポイント付与
政府は来年10月の消費税引き上げに向けて、9項目の対策を提示しました。その中に、中小小売店での買い物をする際、現金支払いではなく、クレジットカードやプリペイドカード、スマホなどでの支払いをすれば、5%分のポイントを付与するとしています。これによって、消費税を2%引き上げる負担を軽減しようということですが、実際には消費税分の2%より大きな5%分を還元するとしています。
ここには、消費税引き上げによる個人消費や景気の冷え込みを防ぐ目的だけでなく、これを機会に、主要国の中でも遅れている日本の「キャッシュレス化」を促進しようとの政治的な狙いがうかがえます。実際、日本での支払いをキャッシュレスで行う割合は2割程度といわれ、キャッシュレス決済が一般的になっている中国や韓国と比べると極端に低くなっています。
キャッシュレス化で誰が潤うのか
ではキャッシュレス化を進めようとしているのは誰か、言い換えればこれによって誰が潤うのか。2つのグループが考えられます。
まずは超低金利が長く続いて経営が苦しくなった金融機関の事情があります。金融機関のコストを下げるにも、預金への支払金利はほぼゼロまで低下していて、これ以上削減できません。店舗や人員もカットしています。そしてここからはコストの大きなATM(自動預け払い機)の削減を考えています。
経済財政諮問会議には高橋進委員のように銀行出身者も入っています。キャッシュレス化が進めば、維持費用の大きなATMの削減が可能になります。すでに三菱と住友など銀行間でのATM共用化の準備も進められています。またコンビニのトップを歴任した委員もいて、キャッシュレス決済が流通業界のコスト削減につながると見て推進しています。
もう1つのグループは、クレジットカードやスマホでの支払い情報を集め、「ビッグデータ」としてこの顧客情報を広く活用したいグループです。米国ではこの個人情報を大規模に集めた「ビッグデータ」が企業にとって大きな経営資源になっています。日本では個人情報に対する規制が厳しく、経営資源としての位置づけは遅れていましたが、その利用価値が大きいことに変わりはありません。
実際、インターネットで買い物をすると、パソコンの画面などにその関連の商品広告がついてきます。買わなくても、商品を閲覧、チェックしただけで、そこに関心があると見られて多くの商品がネット上に紹介されます。カードやスマホで支払いを進めれば、個人の嗜好、決済金額、使用の頻度など、さまざまな情報が集積され、業者にとってはそれらが「宝の山」になります。
同じことは政府にも言えます。今回はキャッシュレス化と併せて、マイナンバーカードにもポイントを付与するとして、マイナンバーカードを推進する材料に使っています。皆がこのカードを持てば、政府は個人の預貯金など資産の把握、税の支払いなど、個人情報の多くを手に入れます。政府にとっては、このカードが、個人の行動を監視し、脱税などのチェックにも大いに役立ちます。
この発想はすでに欧米の寡頭支配勢力によって進められてきました。極端なケースとしては、各人にマイクロチップを埋め込み、各人の行動を監視するとともに、彼らの行動を誘導し、支配者の望み通りの社会、国家に誘導する手段として考えられました。各種カードやスマホは、マイクロチップの前段として、各個人を監視、支配する手段として考えている可能性があります。
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