日本でキャッシュレス化が進まない3つの理由

【この記事のキーワード】

クレジットカードへの不安

 しかし、日本ではこのキャッシュレス化がなかなか進みません。それにはいくつかの理由があります。ここでは3つだけ指摘しておきたいと思います。

 1つは円というキャッシュへの信頼が厚いことです。少なくともこの20年の間、日本の物価上昇はほぼゼロで、20年前も今も1万円の価値は変わっていません。これだけ価値の安定した通貨は世界広しといえども日本の円を置いて他にはありません。この価値が安定し、どこでも使用でき、資産として保存することもできる円キャッシュを日本の国民が好んで使うのはある意味では自然であり、誇らしいことでもあります。

 2つめは、その裏返しで、クレジットカードやスマホなどの決済に多くの人が不安を覚えていることです。先日、私のメールに米国の大手ホテルチェーンから個人情報流出について「お詫び」の連絡がありました。私の住所氏名、支払い状況のほか、クレジットカード番号やパスポート番号も盗まれたと言います。

 これとは別に、かつてまったく身に覚えのないカード支払いが回ってきたこともあり、逆にカード会社から不自然な買い物があるとして、私にその確認の連絡が入ったこともあります。こうした経緯があるだけに、インターネットの買い物も、極力クレジットカードの登録は避け、パスワードも頻繁に変更していますが、そのためにパスワードが違ってはじかれることもしばしばあります。

 メールにはしばしば「会員の確認」と称して、ID、パスワードなどを聞いてくる「詐欺メール」が来ます。一度騙されて答えてしまったこともあり、思わぬ不安を経験しました。

 スマホやタブレットの進歩で、確かに利便性は高まっていますが、そのスピードにセキュリティ(安全性)がマッチしていません。預金が抜かれたり、カードを不正に利用されても保障や保険は万全ではありません。

 そして3つめに、自然災害や予期せぬ事態で、カードやスマホが使えなくなる事態を多く経験していることです。北海道の大地震で長い間停電し、台風や洪水被害で通信機能が停止したり、決済が滞ったケースが少なくありません。日本は近年特に自然災害に見舞われることが多く、しかもその被害が甚大化しています。

 また先日は中国の大手通信機器メーカーのファーウエイの副会長がイラン制裁に違反したとしてカナダで拘束され、その直後にファーウエイと関わりのあるソフトバンクの携帯がつながらず、スマホ決済もできないというトラブルが日本のみならず、海外も含めて発生しました。広く社会インフラに組み込まれているだけに、このトラブルは経済社会に甚大な影響が及びます。

セキュリティ対策が急務 

 確かに企業の側から見ると、キャッシュレス化はコスト削減になり、決済情報は需要分析、嗜好の分析、支払い能力の把握などに有力な資源になります。しかし、その裏返しで、これが悪用されると知らぬ間に預金が引き出されたり、カードが不正利用されたり、個人が思わぬ被害にあうリスクも大きくなっています。

 そのなかでキャッシュレス化を進め、マイナンバーカードを普及させるには、まず情報がハッキングされないような、技術面での防衛体制を強化し、不正を取り締まる法体系を整備し、それでも被害にあうようなケースでは、それを補償したり、保険制度でカバーするなど、利用者に「安心感」を持たせることが重要です。

 現在はセキュリティ面での遅れが顕著で、その被害やそれのリカバリーのための面倒な諸手続きを考えれば、安全安心なキャッシュ支払いで済ませる古くからの慣行はなかなか変わりません。特に高齢者の間ではネットバンキングやスマホ決済にはかなりの抵抗感を持つ人が少なくありません。

 こうしたセキュリティ面での対応が遅れ、キャッシュレス化に不安を持つ人が多い中で、カード支払いやスマホ決済を「5ポイントのお得感」で誘うと、これを利用しない人には「脅し」のように聞こえ、利益喪失感のもとにもなり、かえって政府への不満を高める要素にもなりかねません。キャッシュレス化を進めるにはまずセキュリティ対策が先決です。

1 2

「日本でキャッシュレス化が進まない3つの理由」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。