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『セサミストリート』にホームレス・キャラクター登場〜子ども向け番組は「可愛い」だけでは済まない

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『セサミストリート』より

 『セサミストリート』が同番組初のホームレス・キャラクター、リリーを登場させた。リリーはエルモやソフィアと楽しく虹の壁画を描いている最中に、突然悲しそうな顔つきになる。虹のムラサキ色はリリーの大好きな色で、自宅の部屋もパープルだったとリリーは言う。でも「今はもう家がなくて、いろんな場所に寝泊まりしてる。時々もう二度と自分の家に帰れないんじゃないかと思う……」と、すっかり元気を無くしてしまう。

 そんなリリーをエルモとソフィアは元気付ける。ソフィアは「お母さん、お父さん、お友だち、私……リリーはあなたが大好きな人たちに囲まれているのよね」と、ハートを描き、その真ん中に笑顔のリリーを描く。

 リリーは7歳の女の子という設定だ。2011年に、貧しさから食事を満足にとれない家庭の子供として番組に初登場している。そのリリーがホームレスとして再登場したのだった。

 この件を筆者がツイートすると、「ホームレスのキャラクターならオスカーがいるじゃないか」というリプライがいくつもきた。オスカーはゴミ缶に住む、いつも機嫌が悪くて文句ばかり言う、ちょっと意地悪な、しかし愛すべき緑色のモンスターだ。

 古いアパートの前に置かれたデコボコのゴミ缶に住むオスカーは確かにホームレスと言える。だが、不平を言いながらも「ゴミが大好き!」と高らかに歌い、ゴミ缶人生を謳歌している。現実のホームレスのように怯え、悲しみ、戸惑い、傷付くことをオスカーは決してしない。

子供のホームレス420万人

 アメリカのホームレス問題は深刻だ。筆者は11/22付の記事「Amazonがニューヨークにやって来る!~サンクスギビングにみるアメリカの善と矛盾」で以下のように書いた。

Amazonがニューヨークにやって来る!〜サンクスギビングにみるアメリカの善と矛盾

 今年もまた感謝祭(サンクスギビング)がやってきた。毎年11月の第4木曜日と定められており、今年は22日だ。サンクスギビングの由来は、北米に入植したヨー…

ウェジー 2018.11.22

 全米のホームレス人口は55万人(2017)と、日本の6,200人(2016)に比べると格段に多い。アメリカの総人口が日本の2.5倍であることより、ホームレスの定義が日米で異なることが理由だ。日本では「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」と、路上生活者のみを指すが、アメリカは自身の住所を持たない、つまりシェルター入居者を含む。

 以下、筆者が住むニューヨーク市のホームレスについて書く。現在、ニューヨーク市には路上生活者が数千人、シェルター入居者は63,000人と、史上最悪の記録を更新中だ。路上生活者の人数は推定だが、シェルター入居者は正確にカウントされている。以下はその内訳だ。

・家族ホームレス:48,000人(うち子供:22,900人)
・単身者ホームレス – 男性:13,000人
・単身者ホームレス – 女性:4,500人

 家族ホームレスには成人のみの家族もあれば、成人と子供の組み合わせもあるが、現在、市内で22,900人もの子供がホームレスなのである。

 家族ホームレスとなる理由は様々だが、親が低学歴、かつ1人親の場合はホームレスになりやすい。そもそも低賃金の仕事に就いており、貯蓄がない。なんらかの理由で職を失うと再就職が難しく、蓄えもないため、すぐに困窮する。また、自身が低所得の場合、家族親戚も低所得であることが多く、経済的な支援を頼めない。やがて家賃を滞納してアパートを退去させられる。するとホームレスシェルターしか行き場がない。いったんシェルターに入ると、ニューヨークは賃貸物件の家賃が非常に高く、かつ空室率が極端に低いことから入居できるアパートを見つけるのが至難の技となり、シェルターに長期滞在となりやすい。

 ホームレス人口が増え続けていることから、市内あちこちにあるシェルターも定員に達してしまっており、必ずしも元の自宅付近のシェルターには入れない。すると子供は遠く離れた地区にあるシェルターから長距離通学するか、もしくはシェルター付近の学校に転校することとなる。どちらの場合もクラスメートにホームレスと知られるのは辛く、精神的にも学力的にも落ち込んでしまう。今はほぼ、どの公立学校にもホームレスの児童生徒がおり、学校側も子供の転出・転入・欠席の対応が大変だ。また、着替えを持たない子供のために古着を用意している学校すらある。華やかな面が語られることの多いニューヨークの、これが実態なのである。

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