日本は先進国の中でも女性差別が酷い国? ランキングの順位だけをみても意味がない

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女子教育が世界を救う/畠山勝太

 この世の中には様々な分野でランキングが存在しています。世界的に有名なものには、いくつかの団体がそれぞれ出している世界大学ランキングや、世界経済フォーラムが出しているジェンダー・ギャップ指数がありますし、日本国内に目を向けても都道府県魅力度ランキングなんてものもあります。しかし、このようなランキングの点数の付け方を詳しく見ると、指標の選定や重みづけでかなりいい加減なものが多く、見るに堪えないランキングが大半だったりもします。

 様々なランキングの正しい使い方は、順位を見るのではなく、順位を付けるために使われた指標を見ることです。そして興味のある指標が全体の中でどのような位置づけにあるのかを分析するところにあります。そこで今回はジェンダー関連の世界ランキングの解説をしてみようと思います。

 OECDは、社会制度・慣習とジェンダー指標(以下、SIGI)という、社会制度・慣習における女性差別の国際比較をするための指標を出しています。これまでは主に途上国が対象でしたが、2019年版は先進国も対象に含まれるようになりました。もちろん日本のデータも含まれていて、他のOECD諸国と比較可能な形になっているので、今回はこの結果を紹介したいと思います。

日本は先進国の中で4番目に女性差別が酷い?

 SIGIは、「家庭内での差別」・「身体的な自由さ(ジェンダーに基づく暴力に晒されていない、生殖に関して決定権をもっているか、などを指します)」・「経済的なリソース」・「女性の市民としての自由さ」の4項目からなっています。それぞれの項目の点数は、その項目を構成する指標が平等に勘案されており、全体の点数はこの4項目を平等に勘案した結果からなります(OECDのサイトでは、どの項目も密接に関連し、全ての項目が重要だから、全ての指標・項目を平等に重みづけすると説明されていますが、本当にそうだろうか? という感想を抱きます)。ではOECD諸国の全体の点数を並べてみましょう。

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 日本はOECD諸国の中で右から4番目という位置にいます。さきほど説明し忘れましたが、全ての指標・項目において、点数が0であればジェンダー平等が達成されているという計算式になっています(ここでも、均衡以上に女性に傾いているケース、例えば女性国会議員の比率が80%や90%あるような場合でも、点数が0になるので、やはり手法的にも妥当性が完璧かと言われると、やや疑問が生じます)。つまり、点数の値が大きい方から見て4番目に位置している日本は、先進諸国の中では社会制度・慣習における女性差別が酷い国だと言えます。

 しかし先ほど言及したように、この結果だけを見て「日本は先進諸国の中で4番目に女性差別が酷い国だ」で止まってしまうと、この手のランキングの意味が無くなってしまいます。次に項目ごとの結果を見てみましょう。

家庭内での差別

 まず、家庭内での差別の項目について見ましょう。この項目では、児童婚・離婚・財産相続・家事責任という指標が使われています。

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 この項目で日本は女性差別程度が先進諸国の中で5番目に小さい国に位置づけられます。日本がこの項目で女性差別が小さいのは、法整備が進んでいる点が大きな役割を果たしています。日本は先に挙げた4つの指標に関する法整備において、大きな女性差別が存在しない国とされているわけです。

 では、なぜスイスのようにほぼほぼ女性差別が無い国として位置づけられないのでしょうか。それは法律が整備されていても、その実態に問題があるためです。これはジェンダーに限ったことではなく、日本社会全体に蔓延する問題なのかもしれないというのは、労働基準法とその運用など、日本社会の様々な面に現れていることから読み取れます。ジェンダーの問題に関して言うと、家事責任の指標でこれが顕著に表れています。

 全ての指標で法整備は5段階で評価されていますが、家事責任に関する法整備は先進諸国でスイスだけが一番上の評価を得ていて、日本も先進諸国で唯一、二番目のカテゴリーの評価を得ています。一番・二番目のカテゴリーと三番目以降のカテゴリーには大きな差が存在しています。この、一・二番目のカテゴリーに位置する国は、法システムの中で男女が平等な権利を得ていて、それには例外が無いという共通点を持っています。しかし3番目のカテゴリーの国は、法システムの中で男女は平等な権利を得ているものの、例外が存在するとなっており、法整備上大きな違いが存在していることになります。この違いを考えると、いかに日本の法整備が進んでいるのかが分かるかと思います。

 それでも日本はスイスと同じカテゴリーに位置付けられません。その理由は、日本には習慣や慣習レベルで女性に対する差別が存在しているからだということになっています。これは次に見る家事責任に関する態度と実態のそれぞれのデータを見ると納得せざるを得ない評価になっています。

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 上の図は家事責任に対する態度の結果を示しています。「家事責任に対する態度とは何ぞや」というところでしょうが、これは国際的な調査で、「母親が家の外で仕事をしていると子供が苦しむことになる」という質問に「そう思う」「強くそう思う」と答えた人達の割合を示しています。

 日本では2/3の人が、母親が外で仕事をすると子供が可哀想と思っているようで、この割合は先進諸国の中でも高い方に位置づけられます(米国もジェンダーステレオタイプが強い国なので、日本以上にそう思う人達がいるのは理解できる結果なのですが、カナダやフィンランドでもそのようであるというのは少し驚きでした)。

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 これは家事責任の実態を示した図です。この指標は、家庭内での無給の仕事に使っている時間の男女比を使用しています。全ての先進諸国で女性の方が25%以上長く家事労働をしているのが実態です。しかし、韓国と共に日本はこの比率が異常に高く、女性の方が300%以上も長く家事労働をしているという実態があります。

 女性差別に関する興味深いデータが他の項目でも示されているので、他の三項目についても紹介しようと思いますが、全ての項目を一つの記事で扱うと大変長くなるので、今回の記事ではここまでにして、次回の記事で他の三項目について扱おうと思います。

まとめ

 以前の記事の中で、日本の女性は職場でそのスキルを活かされていないというデータについて解説しました。その記事の中で、日本は男女雇用機会均等法のように、女性の労働参加について制度的にはしっかりと整備されているものの、その運用に大きな問題があるという点を指摘しました。

 今回のデータも同様です。日本は家庭内での女性差別に関して法制度的が他の先進諸国よりも進んでいるか、最低でも他の先進諸国と同程度には整備されていることが示されています。しかし、制度はあれど、家庭内での女性差別に対する国民の態度や、その実態となると、途端に先進諸国の中でも女性差別が酷い国に躍り出てしまうのです。

 私が国際機関で働きだす前の修士課程の学生だった時に「途上国で不就学児がいるのは、義務教育の法制度が整備されていないからだ」とのたまったとんでもない法学の先生にお会いしたことがあります。不就学児童が出てしまうのは義務教育が法律で制定されていないからではなく、制定されていてもその運用に問題があるからだというのは詳しく説明するまでもない話でしょう。これと全く同じ話は日本におけるジェンダー格差にも当てはまっています。現在の日本に求められているのは、ジェンダー関連の法制度が適切に運用されること、ジェンダーにまつわる社会の慣習や態度が変化していくことだと言えるでしょう。

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