【日本カラス紀行 第2回】
お散歩感覚で「カラスの神様」に会える新宿十二社 熊野神社
カラスを好きになると、神社めぐりも楽しくなる。
日本の神社には、「八咫烏(やたがらす)」という三本足のカラスが社紋になっているところも多い。かっこいいデザインのカラス、愛嬌のあるカラス、はたまた「これはもはや別の鳥なのでは」と思えるような珍カラスなど、さまざまなカラスに出会えて、それをいちいち品評するのも面白いのだ。

今回紹介する新宿十二社 熊野神社の絵馬や御朱印を中心に、筆者が集めたお守りの一部
スポーツ業界では、サッカー日本代表のマークとしても有名。もともとは、初代天皇、神武天皇を戦いの勝利に導いたとされる「神の化身」である。八咫とは「大きい」とか「長い」という意味で、とにかく大きなカラスだったようだ。古事記では、神武天皇が熊野(和歌山県)から吉野(奈良県)に進軍したときに、道案内役を務めたとされている。
今のところ人間業界では厄介者にされているカラスだけど、神様業界では思いっきりいい仕事してたんですね。
また、カラスを愛してやまない自分としては、カラスを神格化しているという点で、その神社に勝手な仲間意識を感じてしまう。「同じアイドルを応援するファン同士、お互いがんばりましょう!」といった心持ちからお賽銭も弾むというもんだ。
しかし、宮司さんや巫女さんは必ずしもそうでもないらしい。社務所などで「カラスが好きでこちらにお参りに来たんです!」と鼻息荒く告白しても、「はぁ……ありがとうございます」と困惑した笑みを浮かべられるのが関の山。でも大丈夫。こんなことでくじけていては、カラス愛好家は務まりません。
余談はさておき。
カラスをお祀りする神社の最高峰といえば、やはり八咫烏が舞い降りたとされる和歌山県田辺市の「熊野本宮大社」だろう。いにしえびとたちが熊野古道をてくてく歩いて目指した霊山であり、世界遺産にも含まれている。
この神社が祀っているのは、「家津美御子大神(ケツミミコノオオカミ)」。これだけ聞くと、え? なんの神さま?という感じだが、「素戔嗚尊(スサノオ)」という別名を聞けばピンとくる方も多いだろう。別れたお母さんが恋しいと駄々をこねて神の国を追放されたり、怪物ヤマタノオロチを倒したりした荒ぶる神ですよね。で、このお方にお仕えしていたのが、今日の主人公・八咫烏なのだ。
すごい! なんだかワンマンでパワフルな社長に仕える敏腕秘書みたいだ。というわけで、熊野本宮大社はカラス愛好家として一生に一度ははせ参じたい聖地なのである。
しかし、遠方に住んでいるとなかなか行けない――。
はい、そんなあなたに朗報です! 全国には、この熊野神社の分社が3000社以上も存在するのです!!
熊野三山協議会のホームページで、熊野神社の分社数を調べると、
第1位 福島県(235社)
第2位 千葉県(189社)
第3位 岩手県(176社)
福島県のみなさん、おめでとうございます! ランキングに外れてしまった方もご安心ください。北海道から沖縄まで、分社のない都道府県はございません。ぜひお近くの熊野神社を探してみてくださいね。
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