——次に引っ越す先がペット可だったら飼いたいという思いはあるんですよね。
A「そうですね。3匹とも。ペット可だったらね。だからほんとは市営じゃなくて一般のところで内緒で飼うかもしれなかったけどお金がないから」
——今どんな気持ちですか?
A「寂しいです。ここだと車も危なくないし、猫がもし脱走しても平気だなと思ってここを選んだんですよね」
——今回、ねこけんが引き取らなかったらここに置いて……捨てて行くことを考えていたんですよね。罪の意識はありましたか?
A「ありますね。だって、やっぱり、飼ってた猫を置いて行くとやっぱり餌も食べなくて最後は死ぬっていうから」
——猫を引き取ってもらうのに「取りに来い」ってのはどうなのかって思っちゃったんですけど。自分たちでタクシーや電車を利用して届けに行くことは考えなかった?
A「私が歩ければいいけど、もう私が倒れてから半身麻痺になって歩けなくて。この人(Bさん)は、歩けるけど、文字の読み書きができないから、一人で電車に乗れない」
B「寂しくなるよね、猫いなくなるからやっぱり」
——最初は、自分で保健所に頼んで猫を引き取ってますよね、そもそも。そして今、手放す。この結果をどう思ってますか。
A「悪いことしてるなと思うんだけど飼えなくなっちゃったから」
——そもそも猫を飼っちゃいけないところで飼い始めたこと自体どうかと思いますが。
A「う~ん」
——猫を飼っていることが大家さんにわかってしまえば、出ていけと言われてしまうリスクが常にあるということですよね。その前の物件も、本当はダメだったけど大家さんがOKしてくれていただけで、今回も「1匹だけ」と言われていた。
B「この家がもし、立ち退きになったら、引っ越し費用が出るから、猫が飼えるところを絶対に探す。でも今回はしょうがないよね。猫を離すのはかわいそうだけどね。俺もそう思うから。でも仕方ない。Aちゃんはもう泣いてるからね。1日1回泣いてるから。寂しいなあって」
〈シクシクと泣きだすAさんに、ねこけん代表理事の溝上奈緒子さんが語りかける〉
溝上さん「きちんと貯金して猫を飼うということの責任を認識していなかったということが今回の結果になったと思いますよ。仕方なかったって言うけど、仕方なくないと思う、今回引き取るにあたり『迎えに来てください、でもそのためのお金は出せません』ってことでしたよね? 我々も3匹、大切にしますし医療費もかけていく、その中で費用もすごくかかる。こういう案件は団体はほとんど受けません。でも話を聞いて、猫がかわいそうという気持ちもあったし助けに入らないといけない気持ちもあったんで来たんですけど、猫ちゃんに、謝ってくださいとは思います、正直。やっぱりお二人に懐いていると思うし。私達なんか全然知らない人だし、ご飯はもらえるけれども、7年も8年もお2人といて、急に環境が変わったら、猫たちは捨てられたとやっぱり思います」
A「すみません……(号泣)」
〈猫たちを運ぶためにキャリーに移す間、Aさんはずっと涙を流し、部屋に置かれていたペットフードを、台所の三角コーナーに叩きつけ、捨てていた〉
こうした結果を招いたのは、そもそも「猫は1匹まで」とされていた賃貸物件で、それ以上の数の猫を飼った飼い主に原因がある。「可愛いから」というだけの理由で猫を自分の元に置いても、そのための環境を整えることができなければ、責任を持って最後まで飼うことはできない。
今回引き取られた3匹は、その後、ねこけんの譲渡会で、無事に飼い主が見つかり、今は幸せに暮らしているという。