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星野源の最新アルバム『POP VIRUS』に込められた「うんざり」な怒りと、どうしようもない世の中への愛

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 そういったダークな雰囲気は歌詞の面にも表れている。「Present」の<いかれた季節纏う/半端な嵐のよう/温かな好意と/悪意を手に入れた Baby>や、「Nothing」の<街は怒りと 夢を注いだ/ああ うんざりだ僕らは ただの器だ>といった歌詞からは、直接的に<うんざりっていう感覚みたいなものを出していこう>という意思が読み取れる。

『POP VIRUS』の方向性を決定づけた「アイデア」での成功

 『POP VIRUS』で行われた音楽面や歌詞面の変化には「アイデア」の2番で試みた実験が世間から受け入れられたことへの自信が大きかったようだ。

 「アイデア」はNHK連続テレビ小説『半分、青い。』の主題歌として4カ月近く放送され、すっかりお茶の間になじんだところで8月20日に配信リリースされた。ここでファンは度肝を抜かれることになる。2番以降の「アイデア」はこれまで朝ドラ主題歌として聴いてきた曲とはまったく別物だったからだ。

 1番では、エキゾチックなマリンバが印象的なイントロをはじめ世間が想像する通りの「星野源サウンド」が鳴り響くが、『半分、青い。』では放送されなかった2番では一変する。1番の幸福な空気は消え去って沈鬱なダンスビートになり(ここでSTUTSがフィーチャーされ、彼はミュージックビデオにも出演している)、歌詞も1番とは180度真逆な星野源自身の心の闇を吐露するようなものになっていた。

 この部分には『逃げ恥』ブーム以降、「本当の自分」と「世間から押し付けられるパブリックイメージ」がどんどん乖離していくことに思い悩んで心を病んだ体験が反映されていると星野は各メディアで明かしている。

 このときのエピソードは「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)2018年12月号掲載のエッセイでも詳しく語られているが、そのなかで星野は<自分の楽曲とは裏腹に恋とは縁遠くなり、女性を口説くことも、女性がいる場に行くことも恐ろしくなった。訳のわからないタイミングで涙が出るようになり、目の前に水の入ったコップがあれば壁に投げつけたい衝動を抑えるようになり、誰かと話していると、いまこの人に唾を吐いたりすれば全てが終わるのかなと妄想しては、心の中で首をブンブンと横に振った>と、自滅願望まで芽生えていたと明かすなど、ミュージシャン・俳優としてのキャリアが潰れかねないほど深刻なものであったようだ。

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