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堤真一と谷原章介がそれぞれの持ち味を活かして表現しきった「民衆の敵」とは?

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 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 昨年の世相を表す漢字は「災」でした。地震や豪雨など人間の力ではどうにもできない自然災害だけでなく、仮想通過の流出や官僚による決裁文書の改ざん、女性を差別する大学入試の不正発覚、大企業トップの背任など、人間の欲望や権力構造のいびつさにため息をつくことも、ひときわ多かったように思います。

公害問題に立ち上がる男

 とはいえ、立場が変わればその人の信じる「正義」も変わるもの。上記のような、人災ともいえる不祥事でも、世の中の大半のひとが批判するからといって必ずしもその矛先が正しいかいえばそうではないのも、また真実です。権力者の利己的な欲求やマスコミによる世論操作、他人に同調する大衆心理など、現在日本でも十分に他人事ではない問題を、ノルウェーの劇作家ヘンドリック・イプセンが、異色の社会派劇「民衆の敵」で100年以上も前に提示しています。昨年12月30日まで、堤真一主演で上演されていました。

 舞台は、温泉の発見に沸くノルウェーの田舎町。町出身の医師トマス・ストックマン(堤真一)は、自分が発案した温泉で町のひとびとが豊かになると喜んでいましたが、妻カトリーネ(安蘭けい)の父親が経営する工場から垂れ流される廃液で温泉水が汚染され、病気の元になっていることを突き止めます。

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 彼は市長で不仲な兄のペテル(段田安則)に対策を訴えますが、給水パイプの交換に膨大な費用がかかること、また町外から温泉に来る保養客に知られては町の存亡すら危うくなるため、ペテルは汚染の隠蔽を決断。トマスは新聞「民衆の声」の編集長ホヴスタ(谷原章介)らとともに事実を報道し民衆に訴えようとしますが、工事の費用が税金から賄われると知ったとたん、ホヴスタらも市長の味方に。それでもひとびとに真実を訴えようと、トマスは集会を開くことを決意します。

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