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2018年は、「#MeTooムーブメント」に代表されるような、女性に対する性暴力や性差別にあらためて注目が集まった1年となった。性差による偏見や、男性中心主義的な価値観から生まれる女性の社会的立場の弱さは、世の中のあらゆるシーンで、実にさまざまな形で表出している。なかでも問題が深刻化しているのが、「テクノロジー業界」である。
2017年に米国で行われた調査【編註※】によれば、同国のソフトウェア開発者(AIなどもソフトウェアに含まれる)の85.5%が男性であることが明らかにされている。テクノロジーのメッカであり、先進的なイメージがあるシリコンバレーでさえも男性中心的な文化がまん延しており、そのため「Siri」に代表されるようなAIアシスタントなど新しいテクノロジーにも、男女の不公平を助長する側面があるとの指摘が、各国フェミニストや識者から相次いでいるのだ。
【編註※】
https://qz.com/940660/tech-is-overwhelmingly-male-and-men-are-just-fine-with-that/
テクノロジーのなかでも男性中心主義を再生産
例えば、AIアシスタントは女性の声で“小間使い”のようにあらゆる用事を解決してくれるが、一部識者は「開発者の大多数を占める男性たちが、自分の頼み事を無条件に受け入れてくれる母親みたいな存在をつくろうとしている」と、男性の根深いマザーコンプレックスが介在していると指摘した上で、「現実社会の不平等な構図をテクノロジーの世界でもコピーしようとしているのではないか」と懐疑の声を大きくしている。
それら識者たちの解釈や批判が妥当かどうかの議論は、いったん脇に置いておこう。ただ、テクノロジー業界に女性が圧倒的に少なく、サービスやプロダクトが男性中心主義的になりがちという指摘には、確かに一理あるような気もする。そんな中で、テクノロジー業界における、そのような男女の不平等を是正していこうという動きも現れはじめている。
受付ロボットは女性差別を助長する!? 世界で起きるAIロボット「ジェンダー論争」
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韓国の“テクノロジー系フェミニスト”による団体
韓国では、「テックフェミ」という、テクノロジー業界のフェミニストたちによる団体が結成されている。テックフェミは、テック業界で働く女性、また起業する女性たちによるネットワークを構築。イベントを運営するかたわら、韓国社会で女性に対する差別や事件が起きた際に、民意を喚起するための署名活動などを展開している。
このテックフェミは、2017年末に「女性企画者カンファレンス」というイベントを立ち上げているのだが、クラウドファンディング上で販売した第1回目のカンファレンスの事前入場券は完売。当初予想していた額の2.5倍にもなる募金が集まり、社会的にも大きな話題となった。
テックフェミのオク・チヘ氏は、同イベントで「科学的、合理的と評価されているテクノロジー業界にも明らかな性差別がある。より多くの女性がマイクを手に取る(声を挙げる)べきだ」としている。興味深いのは、テックフェミの会合がただの“批判の場”ではなく、参加者たちがアイデアや仕事の成功事例をシェアする場ともなっていることだ。男女の不平等の是正を掲げるだけでなく、「いかに女性たちの力を社会に証明できるか」というスタンスを持っている点は、社会の支持を集める大きな要因ともなっているようだ。
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