模倣されない「物語」こそが最強のビジネスモデル

【この記事のキーワード】

 まとめると、ビジネスモデルは、次の3つの要素から構成される。

① 顧客利用者提供価値…誰に(顧客と利用者それぞれに)、どのような製品やサービスという手段を使って、どのような価値を提供するか

② 収益モデル…誰から、いつ、どのように対価を回収するか

③ 資源蓄積・獲得…どのような資源を活用・開拓・獲得するか

 ここで大事なことは、まず顧客や利用者が抱える不満や不便などを発見することだ。そうした不満や不便のなかで特に大きいもの、つまりボトルネックは何かを発見することがビジネスモデルをデザインする第一歩となる。なぜなら、ボトルネックの裏返しが価値となるからだ。

ないない尽くしのように見えるビジネスモデル

 本市に拠点を構えるライフスタイルアクセント(山田敏夫CEO)は、ファクトリエというアパレルブランドを持つ。そのビジネスモデルをみてみよう。

 ファクトリエは、熊本市内の商店街で100年続く洋品店に生まれた山田敏夫さんが、20歳のときに留学したフランスで、日本のものづくり文化が消えてしまう危機感を覚え、国内にある高度な縫製技術を残したいという強い思いから立ち上げたブランドだ。国内工場の中でも優れた技術を持つ工場を探し出し、こだわりにあふれたオリジナル商品を共同開発し、心から納得できる商品だけを定番アイテムとして販売している。海外のファストファッションの中には、「数週間しか売り場に並ばないような商品」を次から次へと店舗に並べるブランドもあるが、ファクトリエはその対局にあるといってよい。

 ファクトリエは工場を持たず、店舗も持たない。すべて通信販売だ。通信販売自体は珍しくはない。ZOZOタウンのようにアパレルの通信販売で急成長している企業もある。しかし、ファクトリエは他社ブランドを自社サイトで扱うのではなく、契約工場と開発したアパレル製品を自らのサイトで通信販売している。

 ファクトリエの特徴は他にもある。たとえば、生産工場の名前を公開していることだ。通常、アパレルは生産工場を公開しない。ファストファッションも高級ブランドもここは同じだ。なぜなら、それこそが差別化の資源だと考えているから、公開などあり得ないのである。ところがファクトリエは違う。工場名を堂々とタグにプリントしている。他社が模倣しようと思えば、どの工場にコンタクトすればよいかわかってしまうのだ。

 さらに、製品の販売価格を工場が決めている。希望小売価格ではなく希望工場価格なのである。こうなると、ファクトリエではなく、工場にノウハウやブランドが蓄積していってしまいかねない。

 このようにファクトリエは、工場を持たない、店舗も持たない。そればかりか、工場とのネットワークも秘密としない、すべて「ないない尽くし」という非常識のビジネスモデルなのだ。このようなビジネスモデルに持続性はあるのだろうか。他社に模倣されないのだろうか。

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