
出典:PayPay株式会社HP
100億円があっという間に枯渇
スマホキャッシュレス決済のPayPay(ペイペイ)による「100億円あげちゃうキャンペーン」が、終了した。
PayPayはソフトバンクとヤフーが共同で立ち上げたQR決済サービスだ。消費者は、無料でアプリをダウンロードして、店頭でスマホをかざし、QRコードを読み取るだけで決済ができる。
「100億円あげちゃうキャンペーン」の中身は驚愕だ。利用額の20%がキャッシュバックされる上に、40回に1回の確率で利用全額(上限10万円)がキャッシュバックされるという、まさに大判振舞のキャンペーンだった。
キャンペーンは通常、予定期間いっぱい行われる。ところが「100億円あげちゃうキャンペーン」は、2018年12月4日から2019年3月31日までの予定だったが、開始からわずか9日後の12月13日に終了が宣言された。キャンペーン資金の100億円がまたたく間に枯渇したからだ。
筆者もビックカメラで10万円ほど買い物し、2万円のキャッシュバックを受けた。一切値引きをしないアップル製品を2割引で買え、しかもビックカメラでのポイントも加算されるお得感はなかなか味わえるものではない。筆者のような消費者に向けて、100億円という巨額資金がバラまかれたのだが、ここで大きな疑問が残る。
キャンペーンに100億円もの大金を使った理由は何か? である。
この理由を経営学のフレームで考えてみたい。
小学校時代に体験したイノベーション理論
小学校時代を思い出してほしい。こんな経験はないだろうか。クラスの1人が、流行のゲームや新しいお笑い芸人のフレーズを持ち込む。次に数人がそれを真似し始める。その後、クラスの大多数が真似して、一気に流行が浸透していくという、あの流れだ。
それと同じことが、ビジネス上で発生する。この流れを理論化したのがエベレット・ロジャースによる「イノベータ理論」だ。
その理論は、こうだ。革新的な製品は、5つに分類された購入者によって、受け入れられる。5分類の購入者は以下に定義される。
・ イノベーター(革新的購入者 全体の2.5%)
・ アーリーアダプター(初期購入者 全体の13.5%)
・ アーリーマジョリティ(初期主要購入者 全体の34%)
・ レイトマジョリティ(後期主要購入者 全体の34%)
・ ラガード(購入遅滞者 全体の16%)
その流れは、左から時系列で並べられ、イノベーションのベルカーブ(釣鐘型)グラフと呼ばれる。

『キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』より
小学校の流行事例でたとえてみよう。まず、流行をいち早く持ち込む1人が、「イノベーター(革新的購入者)」。次にそれらをいち早く真似する数名が、「アーリーアダプター(初期購入者)」。その後に続く集団が、「アーリーマジョリティ(初期主要購入者)」というわけだ。