男性たちが全力で恋愛した『おっさんずラブ』
『おっさんずラブ』がセクシャルマイノリティを扱ったドラマの中でも一際注目を浴びていた理由は、男性同士の恋愛を特別なものとして描かず、純粋な「王道のラブストーリー」として描いているところである。笑いを誘うコミカルな要素の中に、「恋のド直球・王道シチュエーション」を惜しみ無く投入し、視聴者の胸をキュンとさせる憎い演出。「ありえない」と笑ってしまう展開も多いが、おっさんたちのひたむきな恋心に心を大きく揺さぶられてしまう。
「恋愛に一生懸命なおじさん」たちは、滑稽だがとても人間らしくて愛らしい。恋する気持ちには性別も年齢も関係ないのだ。相手に自分を知ってほしいから想いを伝え、自分に好意を持ってほしいから努力をする。なり振り構わず全力投球するそのひたむきさに、視聴者は励まされ魅了されたのかもしれない。腐女子と呼ばれるボーイズラブを好む女性たち以外にも『おっさんずラブ』が支持されている所以は、この作品の「恋に対する全力感」ではないだろうか。
打算も計算もなく、相手の幸せを願うそれぞれの「愛」
斬新なストーリー展開もさることながら、『おっさんずラブ』がここまで人気を博したのは、個性の強いキャラクターたちの功績が大きい。田中が演じる春田はもちろん、春田を「はるたん」と呼び猛アタックを仕掛ける乙女な部長・武蔵(吉田鋼太郎)や、春田を好きなのについ強気になってしまうツンデレの牧(林遣人)、激怒していたのに結局は夫・武蔵の恋を応援するはめになる妻・蝶子(大塚寧々)など、とにかく愛すべき人物たちばかり。全員それぞれの恋に一所懸命でひたむきだ。その気持には打算も計算もなく、ただ純粋に恋した相手の幸せを願っている。この『おっさんずラブ』が平成最後の純愛ドラマと呼ばれる理由がわかる気がした。
『おっさんずラブ』は純愛ドラマなので深く追求してはよくないのだろうが、春田と牧の関係性はいったいどのぐらいまで深まっているのか。そして部長は新しい恋ができているのか、それとも春田を忘れられず現在も恋焦がれているのか? 「その後」の彼らがとても気になってしまう。映画ではOL民をより楽しませる展開になっているだろうから、楽しみに映画公開を待ちたい。
ドラマ放送時に見逃してしまった人や、改めてドラマを楽しみたい人には願ったり叶ったりの、全話一挙放送。『おっさんずラブ』と共に新しい年を楽しむのもアリかもしれない。来る映画の前哨戦としてぜひ楽しんでほしい。
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