
これが噂のジビエラーメンだ!!
いまや、ラーメンは日本の国民食であるということに、異論を唱える者は少ないだろう。外食市場の調査・研究機関であるホットペッパーグルメ外食総研が、2018年11月に発表した「30年間総ざらい!平成グルメランキング」によると、「平成で一番行列経験のあるグルメは?」というテーマで首位を獲得したのは「ラーメン・つけ麺」だった。回答者1240人のうち、半数以上にのぼる52.1%の人々は、長い行列に並んででもラーメンを食べた経験があるそうだ。
では、これほどまでに人々を魅了するラーメンという食べ物に、“ジビエ”という新ジャンルが流行りつつあることをご存知だろうか。ジビエラーメンだ。
ジビエとは、猪や鹿といった獣類の肉のこと。獣類は以前から農作物に深刻な被害をもたらしており、駆除の対象となっていたが、せっかくならば食に有効活用しようという動きが、ここ数年でラーメン業界にも浸透してきているのだ。2018年11月には農林水産省、日本フードサービス協会、日本ラーメン協会という3団体がタッグを組み、東京と大阪で「ジビエラーメンセミナー」を開催したほどの力の入れようである。
奇しくも、2019年は亥年ではないか―――今回、ウワサのジビエラーメン店を2軒ハシゴしてきたので、その実食レポートをお届けしよう。
自家製麺 啜乱会(新小岩)/鹿肉のダシが香る、“ちょっぴり”新しい正油ラーメン
まず訪れたのは、JR新小岩駅から歩いて3分ほどの距離にある「自家製麺 啜乱会(すすらんかい)」(東京都葛飾区)。2016年12月にオープンし、「TRYラーメン大賞2017-2018」で新人賞に輝くなど、早くも頭角を現してきている店だ。

最寄り駅からは近いが、あまり目立たない路地にある
筆者が今回いただいたのは、定番メニューである「ザ・正油ラーメン」(770円)。事前情報によれば、豚と鶏、そして鹿肉から取った、3種の動物系のダシが使われているのだという。美しく黒光りするスープに期待を膨らませながら一口すすってみると、ほんのりと甘みが感じられた。

上品なビジュアルのラーメン。店名入りのレンゲもオシャレ
甘みの正体はズバリ鹿肉のダシなのだろうが、そこに獣臭さは皆無で、むしろスッキリとした印象。先入観なく食べれば、これがジビエラーメンの一種だとは気づかないほど自然に調和している。……ひたすら箸が進む……!
事実、この店には、鹿肉の使用を大々的にアピールしている気配がない。店外の立て看板のメニュー解説に「5種類の醤油をブレンド」などと書かれてはいても、鹿肉についてはとくに触れられていないのだ。
ただ、店内の券売機の横には「清流ジビエ」「ホンモノのジビエ。岐阜にあります。」といった文字が並ぶ、1枚のポスターが。どうやらこの店は、岐阜にある清流ジビエサービスという企業と手を組んでいるらしい。独自の“仮眠熟成製法(ナップエイジング)”で鹿を精肉することにより、野生動物ならではの旨味を実現しているそうだ。

壁にはシックな雰囲気の「清流ジビエ」ポスターが
また、撮影してきた写真では隠れてしまっている(スミマセン)が、このメニューにはラーメンとしては珍しい、砂肝のトッピングも。コリッとしたその食感は、ツルッとした麺とのコントラストが楽しく、この店は鹿肉のダシともども、奇抜になり過ぎない絶妙なラインを攻めているように思えた。
――おいしく完食したあとに湧き上がってきたのは、「……ちょっと変わったしょうゆラーメンだった」という感想。「これがジビエラーメンか」という衝撃体験ではなかったが、それこそが店の狙いなのかもしれない。このラーメンはきっと、「ジビエだから」と勇んで食べに行くようなものではなく、誰もが日常的に親しめる1杯に仕上げているのだろう。