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カメラマン広河隆一氏のセクハラ加害で見えた、“権力”と“魅力”の履き違え

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Thinkstock/Photo by Milkos

 フォトジャーナリストの広河隆一氏による性暴力を受けたとして、「週刊文春」(文藝春秋)にて7名もの女性が告発に踏み切った。これを受け26日、報道写真誌「DAYS JAPAN」(2019年2月に廃刊予定)を発行するデイズジャパンは、広河氏を代表取締役から解任したことを発表した。

 12月26日発売の「週刊文春」では、複数の女性が広河氏から被ったセクハラの被害を明かした。2007年頃に「DAYS JAPAN」編集部でアルバイトをしていた、当時ジャーナリスト志望の女子大学生は、広河氏から「僕が写真を教えてあげる」と都内のホテルに誘われ、セックスに持ち込まれたという。かねてより、編集部内で広河氏の権力を目の当たりにしており、「逆らってはいけない人」との思いがあったため、断れなかったそうだ。その後も、業務で叱責されたあとに性交を強要されるなどしたが、立場的に「ここで見放されたらジャーナリストの道は開けない」と思い込み、応じてしまったという。

 また、2008年頃に編集部で働いていた当時18歳の女子大学生は、広河氏からアシスタントの話をもちかけられたが、「アシスタントになるなら一心同体にならないといけないから、体の関係ももたないといけない」と言われ、ジャーナリストへの夢のためにセックスに応じた。女性は「断ったら弟子失格の烙印を押されるんじゃないか」との思いから、その後も関係は続いた。結果、女性は「中くらいのうつ」と診断され、大学を休学。「DAYS JAPAN」編集部からも離れた。その後、写真から離れた生活を送っていたが、東日本大震災の際に広河氏から「アシスタントとしていっしょに来ないか」との連絡を受け、夢を諦めきれず同行。しかしその出張先でも、高熱と薬の副作用で意識朦朧のなか、性交を強要されたという。

 このほかにも、「DAYS JAPAN」にかかわっていた複数の女性(計7名)が、広河氏から「写真を教える」という名目のもとヌード撮影を強要されたり、肉体関係を持つよう誘われたりした過去を暴露している。「DAYS JAPAN」編集部において、編集長という立場を利用したセクハラが横行していたことがうかがえる。

 広河氏といえば、チェルノブイリ原発事故や薬害エイズ事件の取材に赴き、一貫して「被害者の立場に立って」取材を続けてきたジャーナリストだ。世間では“人権派”として名を通してきた広河氏だけに、その卑劣な素顔に落胆した人は多いだろう。

 広河氏は「週刊文春」で女性たちとの肉体関係を認めつつも、「望まない人間を僕は無理やりホテルに連れて行きません」と、性暴力ではなく同意の性交だったとの認識を披露している。さらに、著名フォトジャーナリストとしての立場を利用してセクハラを行っていたかと問われたところ、広河氏は、「(女性たちは)僕に魅力を感じたり憧れたりしたのであって、僕は職を利用したつもりはない」と弁明。ここに根本的な問題があるのかもしれない。

 一転して26日、広河氏はホームページ上にて謝罪文を発表した。

 <私は、その当時、取材に応じられた方々の気持ちに気がつくことができず、傷つけたという認識に欠けていました。私の向き合い方が不実であったため、このように傷つけることになった方々に対して、心からお詫(わ)びいたします>

 違和感のある文章だ。“向き合い方が不実だった”とは、まるで男女の正しい交際を連想させる言葉ではないか。いったい、どういう認識なのだろう。

 広河氏は、10代や20代の若い女性たちが、当時すでに60歳過ぎの自身に対し、性的な“魅力”を感じているという認識を持っていたようだが、それは常識的な感覚ではない。ジャーナリストとして女性たちから尊敬のまなざしを注がれることはあっただろうが、それを性的な“魅力”と混同してはいけなかった。

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