子供の夢を壊し、幼い命をうばうトランプと、アメリカを取り戻すための2020年大統領選

文=堂本かおる
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写真:AP/アフロ

子供の夢をこわす大統領

 アメリカには児童福祉の概念が浸透している。子供は将来、国を形づくる人々であることに加え、自身の経済力だけでは子供を育てきれない低所得者が多いことから、子供は社会全体が支援するものという考えだ。

 たとえば、貧しさを理由に「子供を産むな」、産んだ後に「育児は自己責任」「社会福祉に頼るな」といった空気はほとんどない。これらは子供より親に向けられた誹りだが、子供の健全な成長を阻む。

 そもそも子供は弱者だ。ゆえに衣食住から教育まで、すべてを大人が与える。病気やケガは命にもかかわるため、大人が最大限の注意を払って予防し、それでも負ってしまった場合は最善の医療を施す。子供は身体だけでなく、精神的にも未成熟ゆえに、やはり健全に成長させるべく大人が見守る。子供特有の発想、想像、空想を尊重しつつ、年齢に合わせて徐々に現実とすり合わせる訓練を課していく。これらを総称して「子供を育てる」と呼ぶ。

 昨年のクリスマス・イヴに大統領のドナルド・トランプは、7歳児に向かって「まだサンタを信じているのか」と言い放った。

 12月24日、トランプとファーストレディのメラニアはメディアのカメラに囲まれたホワイトハウスの一室から、それぞれ別の子供に電話をかけた。トランプはサウスカロライナ州に住む7歳の女の子、コールマン・ロイドと話をした。以下はその際の会話だ。

トランプ「まだサンタを信じているのか?」
コールマン「イエス、サー」
トランプ「7歳だからな、(サンタを信じるかどうかの)境界線だな?」
コールマン「イエス、サー」

 北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)は毎年、サンタクロース追跡ウエブサイトで世界中の子供に夢を提供している。コールマンがサンタの居場所を訪ねるためにNORADに電話すると「科学者よりも大統領と話したい?」と聞かれ、トランプと対話することとなったのだった。

 つまりトランプはサンタクロースを信じていると分かり切っている7歳児に「サンタを信じているか?」と詰め寄ったことになる。そもそもコールマンはトランプに「サンタのためにクッキーを用意している」と話している。クリスマス・イヴの夜、子供がテーブルにサンタのためのクッキーとミルクを置いて寝るのは一般的な習慣だ。

 トランプは「7歳はまだサンタを信じるかどうか、境界線の年齢」と、当の7歳児に告げることもしている。ちなみに境界線(marginal)という単語は7歳児の語彙ではなく、コールマンも後日のメディアからの取材時に「意味を知らなかったけど返事した」と語っている。

 このエピソードから窺えるのは、トランプが12歳の子供(メラニアとの子、バロン)を持つ父親、かつ何人もの幼い孫を持つ祖父でありながら、一般的な子供の想像力、思考、語彙、習慣をまったく理解していないというだけでなく、そもそも「常識がまるで無い」ということである。

 唯一の救いは、コールマンがトランプとの会話後も「サンタを信じてる」ことだ。

「壁を作れ!さもなくば政府閉鎖!」~80万人の連邦職員が給与ストップ

 トランプは今もメキシコとの国境に何がなんでも壁を作ると意固地になっている。3,000キロを超える長大な国境線に壁を作るには莫大な建設費用がかかる。トランプは大統領選の最中に「メキシコに払わせる」と、誰が聞いても無理とわかる公約をおこなった。当然、メキシコは払うはずもなく、するとトランプはアメリカの税金で作ると言い出した。しかし5ビリオン・ドル(約5,500億円)もの予算を議会は通さない。怒り心頭に発したトランプは、クリスマス直前の12月22日に米国政府を閉鎖した。

 政府の閉鎖がおこなわれると、多くの連邦職員が自宅待機となる。国防や年金支払いに関わる省庁や部署の職員を自宅待機にすると国家存亡の危機にもなり得るため、42万人は無給で出勤し、残りの38万人が自宅待機となっている。

 どちらも閉鎖前の給与は受け取っているため、すぐに「食うに困る」職員は少ないと思われるが、下級職員の給与はかなり低い。閉鎖がいつまで続くか分からず、次の給与をいつ受け取れるかも不明だ。したがって、そこそこの給与を受け取っている職員であっても家賃、自宅や車のローン、クレジットカードの支払いを憂慮している。さらにアメリカ人が年間最大の出費をせねばならないクリスマス直前と、最悪のタイミングだった。

 結果、連邦職員たちは家族団欒のクリスマスの出費を控えた。連邦職員だけでなく、連邦政府と契約を結んでいる企業やNPOと、そこで働く人々も影響を受けている。SNSには夫がタトゥ・アーティストだという女性の書き込みもあった。政府閉鎖が決まるや否や、タトゥの予約が3件もキャンセルされたとのこと。キャンセルした客は連邦職員だと妻はみている。

 トランプは欲しくてたまらない「壁」というオモチャを買ってもらえず、トイザらスの通路にひっくり返って手足をバタつかせている幼児なのだ。癇癪を起こしている子供は他の子供のことなど気にする余裕も能力もない。アメリカのほとんどの子供にとって一年でもっとも楽しいクリスマスに政府をシャットダウンし、家族団欒を台無しにしてしまったことにも気付いていない。

 ちなみに政府閉鎖を言い出した大統領と、それを止められなかった国会議員たちは、政府閉鎖中も給与を受け取っている。

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