子供の夢を壊し、幼い命をうばうトランプと、アメリカを取り戻すための2020年大統領選

文=堂本かおる
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死んでしまった移民の子供たち

 サンタクロースはいないと言われても、クリスマスを台無しにされても、それでも大方の子供はサバイバルする。だが、死んでしまった子供たちは生き返らない。

 クリスマス・イヴの日、メキシコとの国境のアメリカ側にあるビザ無し移民の収容所で幼い男の子が亡くなった。父親とともにグアテマラからやってきたフェリペ・ゴメス・アロンゾ(8)は体調を崩し、いったん病院に運ばれたのちに収容所に戻された。再度の不調で病院に再送されたが時すでに遅く、亡くなってしまった。

 フェリペの死のわずか半月前、12月8日にもほぼ同じ状況で、やはりグアテマラからやってきた女児、ジャケリン・カアル・マクイン(7)が亡くなっている。この件については公聴会が開かれ、収容所を管轄する国土安全保障省の長官、キルステン・ニールセンが召喚されていた。

 民主党議員からの「国土安全保障省の拘束下でこれまでに何人が亡くなっているのか?」の質問にニールセンは答えられなかった。議員は重ねて「では、おおよそ何人か?」と問うたが、ニールセンは「回答を(後で)届けます」と答えるにとどまった。長官が管轄下での移民の死亡数を把握しておらず、子供が死んだがゆえに公聴会に呼ばれてもなお、リサーチすらせずにやってきたのである。もしくは無知、無責任と責められるほうがまだマシと判断せざるを得ないほどの死者を出しているのか。いずれにせよ、この公聴会の4日後に8歳のフェリペは死んでいる。

 2件続いた悲惨な子供の死に、ある関係者は、収容所は30~40年前に単身男性を収容するために建てられたもので、家族や子供には向いていないと説明している。トランプ政権の「ビザなし移民の親子引き離し政策」が問題になった際に内部の写真が公開されているが、金網で仕切られ、ベッドもなく、マラソンなどの際に配られるアルミ素材の毛布をかぶって床で寝るだけの場所だ。非常に寒く、移民の間で「アイスボックス」と呼ばれている。

 また、収容所の職員の数が足りず、子供の世話などしたことのない国境警備隊員が緊急に回されたり、新たに雇用した職員の履歴チェックがなされていない(小児性愛者が含まれている可能性もある)といった、本来あってはならない事態が報じられている。

 米国政府は、この環境に幼い子供たちを収容しているのだ。先に書いた「ビザなし移民の親子引き離し政策」も、こうした収容所にいったん収容された親子が引き離され、子供だけが全米各地の施設に移された。あまりの残酷さに判事から親子の再会命令が出されたが、2〜3カ月も親と会えなかった幼児の中には親を見ても認識できなかったり、さらには親から逃げ出そうとするケースもあった。精神的なトラウマを負った子供たちが回復するにはかなりの期間が必要と言われている。それでも再会できただけ幸運とすら言える。親だけを母国に強制送還したために居どころが分からず、子供は今も米国内の施設にとどまっているケースがあるのだ。

大統領が子供好きである必要はない

 オバマ元大統領が無類の子供好きだったのは個人の資質だ。ホワイトハウス職員に子供が生まれると「連れてきて」と頼み、オーヴァル・オフィス(執務室)で床に寝転がって赤ちゃんと遊ぶ姿、ハロウィンにスパイダーマンに仮装した子供に「ヤラレレタ!」ポーズをとる姿、遊説先に詰めかけた市民の赤ちゃんを抱き上げ、頬ずりする姿は人々をなごませ、オバマ元大統領に愛情と信頼を寄せる大きな要因のひとつになった。

 個人としてのトランプが子供好きでなくとも問題はまったくない。ただし、大統領には国民としての子供の健全な育成を願い、そのための政策を施行する義務がある。外国人や移民、さらにはビザ無し移民であっても、いったん米国内に入れた子供の健康と無事を保証する義務が、大統領にはある。

 しかし、トランプは単に子供好きでないだけでなく、子供を人とみなさず、まっとうに支援、保護する義務を怠るどころか、死に至らしめており、その自覚もない。2人の子供が死んだのは「民主党のせいだ」とツイートしている。幼くして死んだ子供と、その家族を悼む気持ちはカケラも持ち合わせていないのである。さらにトランプは、壁の予算が承認されるまで政府閉鎖を続けるとも発言している。

 大統領失格である。いや、人間失格である。

アメリカにはいつも希望がある

 しかし、アメリカには常に希望がある。昨年11月の中間選挙で大量の人種民族マイノリティ、女性、性的マイノリティが当選し、下院は民主党が過半数を超えた。その中間選挙が終わると同時に、なかば公式に2020年の大統領選が始まった。すでに20人近い出馬者が予想されている。実際にはさらに多くの出馬があり、大混戦となるだろう。2期目を狙うトランプも、もちろん大暴れするだろう(選挙までに起訴、辞任がなければ、だが)。

 先日ニューヨーク・タイムスが、大統領選出馬の可能性が高い現職上院議員4人の名を上げる記事を掲載した。いずれも民主党のカマラ・ハリス(ジャマイカ系とインド系のミックス、女性、54歳、カリフォルニア州)、コーリー・ブッカー(アフリカン・アメリカン、男性、49歳、ニュージャージー州)、エリザベス・ウォーレン(白人、女性、69歳、マサチューセッツ州)、クリスティン・ジルブランド(白人、女性、52歳、ニューヨーク州)だ。歴代45人の大統領のうちバラク・オバマ以外がそうであった「白人男性」が見当たらないではないか。かつウォーレンを除くと若く、全員がリベラルな民主党地盤の「ブルー・ステイト」と呼ばれる東海岸、西海岸の州の議員だ。

 2019年のアメリカは、何かが大きく変わろうとしている。
(堂本かおる)

追記:12月31 日にエリザベス・ウォーレンが出馬表明をおこなった。2020年大統領選の火蓋は切って落とされたのである。

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