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アメリカにはいつも希望がある~国民を脅迫するトランプ大統領と、多様化した民主党の下院議員

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写真:AP/アフロ

 2019年初のアメリカ政界は民主党と共和党のコントラストが際立った。民主党はビビッドな色のスーツと満面の笑顔。共和党はどんよりとした暗色の背広と眉間に皺。

 昨年11月の中間選挙で大量の女性議員、マイノリティ議員が当選したことは以下の記事で伝えた。当選者は1月3日に議員としての宣誓をおこない、晴れてアメリカ合衆国第116期下院議員となった。

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ウェジー 2018.11.15

 初日の議会後、民主党の女性議員たちは議事堂の前で集合写真を撮っている。民主党が多数派になったことを受けて下院議長に返り咲いたナンシー・ペロシ議員(カリフォルニア州)はブルーのスーツに純白のコート姿だ。そのペロシ議長を88人の女性議員が取り巻く。赤、青、白、ピンク、グリーン、黄、パープル……女性議員たちのスーツのカラフルなこと! そして、誰もかれもが晴れやかな笑顔だ。

 メディアも女性議員をフィーチャーした。議会初日と前後してペロシ議長や、中間選挙で旋風を巻き起こした、29歳のアレクサンドリア・オカシオ-コルテス議員(ニューヨーク州)などがテレビに出演。ペロシ議員は昨年末よりトランプの「政府閉鎖」を阻止しようと奮闘してきただけに、議長となった今、さらなる健闘が期待されている。オカシオ-コルテス議員はプログレッシブ派であることに加え、歯に衣着せぬ物言い、はつらつとした若さ、さらに大きな目を見開き、インタビューの最中にすら口を大きく開けて大笑いする、いかにもブロンクス下町っ子的な立ち居振る舞いも含め、今も寵児扱いだ。CBS『60 Minutes』では「トランプは疑問の余地なく、レイシストです」と言い切った。

 そのオカシオ-コルテス議員に、イルハン・オマール議員(ミネソタ州)が黒人議員連盟のジャケットを見せびらかす写真も報じられた。コーヒーを片手に仲良さげに笑い合う二人は、まるで女子大生のようにすら見える。しかし、この二人も含め、多くの新議員たちは人種民族・宗教・ジェンダー・性的マイノリティ、もしくは低所得地区出身と、若くとも人生の経験を十分に積み、地域の人々と語り合い、勉強を重ね、アメリカという国と人々に奉仕するために立候補して当選を果たした、今やプロの政治家なのである。

 もちろん議員としての経験は浅く、オカシオ-コルテス議員はインタビューで事実誤認の発言をし、メディアに「ピノキオ」(嘘をつくと鼻が伸びる)と揶揄された。宣誓式の前日には、大学生時代のダンス・ビデオが保守派のツイッター・アカウントによって、議員をバカにする目的でアップされた。ところが議員は余裕の対抗策に打って出た。「共和党は女性が踊るとスキャンダルになると思ってるらしい 。女性下院議員も踊れるって分かるまで、ちょっと待ってよね」と、議事堂の自身の新しいオフィスの前でスーツ姿で踊るシーンを自らツイート。このビデオが注目を集め、今や議員のフォロワーは200万人を超えてしまった。

 そもそも議員は当選直後に議事堂の中を歩きながらビデオ撮影し、議事堂ミニ・ツアーとしてアップするなど、SNSを活用して若者に政治をアピールする努力を以前よりおこなっている。

トランプを「マザーファッカー」と呼ぶ議員

 新議員の宣誓式は、各議員が聖書に片手を当てておこなうのが一般的だ。だが今回、史上初のムスリム女性議員2人は聖書ではなく、コーランを使った。

 ムスリムであるだけでなく、ソマリアからの元難民でもあるイルハン・オマール議員はヒジャブをかぶっている。議会には1800年代に作られた「帽子は禁ずる」という規則があったため、議会初日の3日に「宗教に基づく被り物は許可する」という法案が可決された。これによりヒジャブだけでなく、ユダヤ教徒の男性がかぶるキッパ、シーク教徒の男性が巻くターバンなども許可されることとなる。

 なお、ヒジャブ許可の法案に対し、民主党議員は全員が「賛成」、共和党は全員が「反対」の票を投じている。慣例的な投票パターンとはいえ、この2党真っ向からの対立構造が今のアメリカが抱える問題の根底にあると言えるだろう。

 もう一人のムスリム女性議員、ラシダ・トライブ(ミシガン州)は平素からヒジャブは着用していないが、宣誓式は祖国パレスチナの民族衣装をまとっておこなった。

 このトライブ議員も新年早々、メディアを賑わした。トライブ議員はある小さな政治集会でのスピーチで「あのマザーファッカー(トランプ)を弾劾します!」と言い、その瞬間のビデオがSNSに流れたのだった。マザーファッカーはアメリカでは放送禁止用語だ。今は議員で、そもそもは弁護士、子供を持つ母親でもある女性の言葉として、かなりショッキングだ。だが、この件を取り上げた政治家や識者の多くが言葉そのものへの批判はせず、「FBIによる捜査が終了する前に弾劾を語るのは時期尚早である」とコメントした。自身もマザーファッカーを連発することで知られる俳優のサミュエル・L・ジャクソンに至っては、「あのマザーファッカーをマザーファッカーと呼ぶことは問題ではない。問題はマザーファッカーを大統領と呼ぶことだ」とツイートした。

 下院議員の中で唯一の無信仰者であるクリステン・シネマ議員(アリゾナ州)は、宣誓は合衆国憲法とアリゾナ州憲法を使っておこなった。宗教色の強いアメリカにおいて政治家が無信仰を公言するのは勇気ある行いだ。全米人口では4人に1人が無信仰と出ているが、キリスト教の風土が強く、政治的にも力を持つことから、政治家が無信仰を表明すると得票が難しくなる。ちなみに下院議員の9割近くはクリスチャンだ。他はユダヤ教徒が30人ほどいる以外はイスラム教徒、ヒンドゥ教徒、仏教徒がそれぞれ2~3人ずつとなっている。

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