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アメリカにはいつも希望がある~国民を脅迫するトランプ大統領と、多様化した民主党の下院議員

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ねじれ国会にトランプ激怒

 今回、新たに102人の新しい議員が誕生した。その内訳は以下。

民主党・新議員52人
 女性議員 - 35人
 男性議員 - 27人

共和党・新議員30人
 女性議員 - 1人
 男性議員 - 29人

 民主党が共和党を圧倒的に上回っている。トランプの共和党政権に人々が翻意を示したと言える。かつ女性議員の数が抜きん出ている。これもトランプの度重なる女性差別発言と、#MeTooムーブメントの結果だ。対して共和党の新女性議員は、わずか1人に留まっている。

 さらに新議員は黒人、ラティーノ、ネイティヴ・アメリカン、アジア系など、人種民族的も驚くほどの多様化となった。

 上記の新議員と前期からの続投議員も含めた下院議員の総数は453人。その内訳は以下。

 民主党 - 235人
 共和党 - 199人
 未決着 - 1人

 民主党が多数派となったわけだが、上院は共和党が多数派のままで、いわゆるねじれ国会となってしまった。これがトランプを激怒させているのだ。

JFK空港から職員が消える?

 民主党が下院議員の人種民族・宗教・ジェンダー・性的指向を大きく多様化させたこととは対照的に、トランプの共和党政権は移民の締め出しに血道を上げ、米国市民をも圧迫している。

 トランプは大統領選の公約だった「メキシコ国境に壁を作る」を2年経っても果たせずにいる。その間、貧困と凄惨なギャング暴力にあえぐ中米からの難民希望者が国境に殺到し続けている。

 当初は「壁の建設費用はメキシコに払わせる」と無茶な公約をしたトランプも、メキシコが払うつもりがないことはさすがに理解した。すると議会に「5.6ビリオン・ドル(約6,000億円)」の建設予算を求めた。議会がこれを拒否すると、「予算を認めるまで、米国政府を閉鎖する」と言い、クリスマス直前の12月22日に実行してしまった。

 以来、全米に80万人いる連邦職員は無給で勤務、またはやはり無給の自宅待機となっている。当初は当の職員以外はそれほどの影響を感じなかったが、今では目に見える弊害が徐々に現れ始めている。

 ニューヨークのJFK空港では、乗客の荷物検査などをおこなう空港職員(連邦職員)が連日170人も“病欠”していると報じられている。政府閉鎖が終了するまで給与は出ず、そのメドも立っていない。決して高給取りではない職員たちは家賃やローンの支払いに困窮するといった事態に陥っている。そのため、託児所代を節約したり、または現金収入が得られるアルバイトのために欠勤しているのだ。今のところは出勤している職員の勤務時間延長でしのいでいるが、空港閉鎖が長引くとどうなるのか。

 全米にある国立公園も園内やトイレの清掃ができず、閉鎖してしまったところがある。有料の公園や名所であれば、地域の収入減となっている。周辺の飲食店や土産物屋も閑古鳥が鳴いているはずだ。1月の第1週末には全米規模のイスラム若者団体がフロリダ州やカリフォルニア州の公園をボランティアとして清掃した。グループはホワイトハウスとの目と鼻の先にあるワシントンD.C.のナショナルモールも清掃した。自由の女神はニューヨーク州知事の判断により一般公開を続けている。ただし1日につき6.5万ドルの運営費用の拠出を州がおこなっている(筆者の払った州税も使われているはずだ)。

 閉鎖が長引くにつれ、生活保護費、食料クーポンなどの財源の計算がされるようになった。現時点では正確な予測は不可能だが、このままでは2~3月には減額せねばならない事態にもなり得るとのこと。また、新規の申請は滞っている。まさに人命に関わり始めているのである。

 さらにタックスリターンの問題が持ち上がっている。アメリカは企業雇用者も含め、全国民が1月から4月の間に確定申告をし、還付を受ける。税務局も多くの職員が自宅待機となっているため、すべての作業が遅滞し、還付金をすぐには受け取れない可能性がある。還付金は前年に過剰に収めた税金であり、収入ではないが多額になる人も多く、いわばボーナスのように待ちわび、受け取ると高額商品を買う人もいる。これが遅れると、さすがのトランプ支持者も怒りを抑えられないのではないか。

 いずれにせよ、米国政府の閉鎖は国益上も百害あって一利なしだ。民主党の上院リーダーのシューマー議員、下院リーダーのペロシ議員は「政府閉鎖の解除」について、年明け早々にトランプと会談をおこなった。その際のトランプの発言に2人は心底驚かされたと言う。

「オレのやり方を要求する。コンクリート製の壁に5.6ビリオン・ドル(約6,000億円)だ。さもなくば政府閉鎖は数カ月どころか、何年も続くぞ」

 大統領による、自国と国民への脅迫である。

移民が創る国アメリカ

 若さやマイノリティであることがすなわち優れた政治家の証ではもちろん、ない。しかし、白人男性が多数を占めてきた政界に、彼らが知る機会のない暮らしを送っているマイノリティたちが代表を送り込んだことには大きな意義がある。多様性の国では、政治家にも多様性が必要なのだ。

 メキシコ国境経由のビザを持たない移民、難民希望者をすべて受け入れるだけのキャパシティはアメリカにもない。それは確かだ。しかし、世界有数の大国として、自国では生きていけない人々を支援する国際的、人道的な義務がある。その義務をいかに果たすかを討議し、決めるのが大統領と議会の仕事のひとつだ。そうして迎え入れられた移民や難民は、未来のアメリカに貢献する市民となり、アメリカと世界に利益をもたらす。

 史上初のムスリム女性議員のひとりで、議場でのヒジャブ着用を勝ち取ったオマール議員は、宣誓式の前日に空港で撮影した父親との写真をインスタグラムにアップした。

「23年前、ケニアの難民キャンプから父と私はワシントンD.C.の空港に着きました。今日、宣誓式の前日に、初のソマリ系アメリカ人下院議員としての宣誓式のために、同じ空港に戻ってきました。#希望」
(堂本かおる)

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