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「“貯金”のできる内廷費でやりたい」が皇族がたの本音? 27億円の国費を投じる大嘗祭と、“国事行為”たる即位の礼が持つ意味

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1990(平成2)年11月22日から23日にかけて執り行われた、今上天皇の大嘗祭。写真は、皇居・東御苑にて主基殿に入られる天皇・皇居両陛下(写真:読売新聞/アフロ)

【歴史学者・小田部雄次氏インタビュー 中編】

 2018年11月22日、秋篠宮文仁親王による誕生日記者会見での「大嘗祭は国費ではなく内廷会計(皇室の私的な活動費)で行うべきだと宮内庁長官に言ってきたが、聞く耳を持たなかったのは残念」という衝撃発言。その背景について、歴史学者の小田部雄次・静岡福祉大学名誉教授は前回の記事で、皇室の問題を解決するための制度がそもそも存在しないという国家のシステム上の問題と、それを改善する上で障壁となっている今の皇室と政府の間の確執があると分析した。

 宮内庁は2018年12月21日、「身の丈にあった儀式として行うのが本来の姿」という秋篠宮発言を無視するかのように、2019年5月の新天皇即位に伴って同年11月に執り行われる大嘗祭には、前回1990年の大嘗祭の約22億円を上回る27億円もの国費を投じると発表している。では、今回の発言で国民の関心が高まっている大嘗祭とは、そもそも皇室にとってどんな意味を持つものなのだろうか? 引き続き小田部氏に解説してもらった。

小田部雄次(おたべ・ゆうじ)
1952年生まれの歴史学者で、静岡福祉大学名誉教授。専門は日本近現代史。皇室史、華族史などに詳しく、著書に『皇族―天皇家の近現代史』(中公新書)、『肖像で見る歴代天皇125代』 (角川新書)などがある。

【歴史学者・小田部雄次氏インタビュー 前編:「宮内庁が聞く耳を持たなかった」“秋篠宮様ご発言”から考える、皇室と安倍政権との“確執”】

内廷費を充てる“新嘗祭”

――11月のご発言の中で、「大嘗祭は宗教色の強い皇室行事」と述べられていますが、そもそも大嘗祭とは、どのような行事なのでしょうか?

小田部雄次 大嘗祭とは、新天皇が即位後に初めて行う新嘗祭のことです。この新嘗祭というのは、簡単にいうと一種の収穫祭。宮中三殿の構内にある神嘉殿で毎年行われているのですが、これが皇室にとってはきわめて重要な宮中祭祀なんです。

 新嘗祭では、飛鳥時代の第35代皇極天皇の代からといわれる古式にのっとり、天皇が新穀を神に捧げ、その年の収穫に感謝する。まさに、“神武天皇を初代とする世界最古の皇統”を象徴する、天皇家を天皇家たらしめている行事といえます。それだけに、宮中の人々にとっては非常に思い入れが深いわけですね。

 ここで重要なのは、これが宮中祭祀、つまり皇室の私的活動であるという点です。だからその費用としては毎年、内廷費を充てている。内廷費とは、皇室経済法第4条で「天皇並びに皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び内廷にあるその他の皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるものとし、別に法律で定める定額を、毎年支出するものとする」と定められていますから、私的活動である宮中祭祀の費用として合法的に使えるわけです。

――昔から国費でなく内廷費で行っていたのでしょうか?

小田部雄次 内廷費で行うようになったのは戦後のことです。昭和天皇は、日本国憲法で新たに規定された政教分離の観点から、皇室の私的活動である新嘗祭には内廷費を充てるべきだと考えた。もし国費を使えば、国民の反発を招くという懸念があった。それで、新嘗祭は私的な祭祀だから内廷費で行い、国費は使いません、ということにしたのでしょう。

 実際、1990年の大嘗祭をめぐっては、政教分離の原則に違反するとして各地で訴訟が起こされています。いずれも訴えは退けられましたが、本当はそのような裁判沙汰になること自体、皇室としてはなんとしても避けたかったはず。私的なことで国民に迷惑をかけるのは心苦しいというのはもちろん、皇室として大切にしている祭祀だからこそ汚点を残したくない、口出しされたくないという強い思いがあるはずですから。

14億5000万円で設営し、すぐに取り壊した平成の大嘗宮

――とすると、新嘗祭の一種である大嘗祭も宮中祭祀、つまり皇室の私的活動である以上、今回の発言にもあったように、本来なら国費でなく内廷費で行うべきということですか?

小田部雄次 そうですね。実は昭和天皇も、大嘗祭を国費で行うことについてはかなり気にしていたようです。それで、内廷費を“ためて”大嘗祭の費用に充てようとも考えていたらしい。

 内廷費は国庫から毎年3億円余り支給されますが、皇室経済法第4条で「内廷費として支出されたものは、御手元金となるものとし、宮内庁の経理に属する公金としない」とされています。つまり、決算がないので残金をためられて、それをどう使おうと構わないわけです。それで昭和天皇は、倹約して内廷費を少しずつ貯金すれば大嘗祭を行える、と考えたようなんです。

 ところが、今上天皇即位に際して当時の政府が、確かに宮中祭祀ではあるけど、まあおめでたいことだし、“国威発揚”的な意味合いもある大きな儀式だから、内廷費ではなく臨時支出で国庫から出しましょう、と決めてしまったんです。

 とはいえあのときは、大嘗祭に限らず、あらゆる儀式が日本国憲法施行後初めてのことだったので、憲法と折り合わないことがいろいろ出てくるのも無理はなかった。今上天皇としても、立場上、口出しするのはなかなか難しい。天皇は政府の承認したことをすると憲法で定められていますから、政府の決定に従わざるを得ません。大嘗祭を自分たちのお金で堂々と行いたい思いと、国民に対する心苦しい気持ちとの板挟みで苦労されたのでしょう。

――費用が巨額であることも批判される要因になっていますが。

小田部雄次 確かにそこがもうひとつの問題ですね。大嘗祭では、宮中に大嘗宮という新しいお宮を造って、そこで大々的に儀式を執り行うのですが、平成のときにはその大嘗宮の設営費だけで14億5000万円もかかりました。しかも、大嘗祭が終わったらすぐに取り壊してしまう。2019年に新造予定の大嘗宮の設営費は、平成のときをさらに上回る19億700万円だそうです。これはいかがなものかと誰だって思うし、実はそこまでお金をかけなくてもできるという指摘もあるんです。

――秋篠宮様は、大嘗祭の費用を抑えるため、大嘗宮を建てず、毎年新嘗祭を行っている神嘉殿を活用する代替案を宮内庁に伝えていたと報じられています。

小田部雄次 その案は、昭和天皇の弟で今上天皇の叔父にあたる高松宮宣仁親王も考えていたらしい。神嘉殿で行えば、少なくとも費用を半分削減できて、内廷費の積立金で十分賄えるという試算もある。戦後、国民と共に歩んできた皇室としては、やはりできるだけ多くの国民の理解を得られる形で大嘗祭を行いたいという思いがおありになるであろうことは間違いないわけです。国費を使うことで平成のときのように国民の反発を招いて裁判沙汰になるぐらいなら、多少儀式の規模は小さくなっても内廷費でできる範囲でやったほうがよほどいい。秋篠宮様の「身の丈にあった儀式」という発言は、おそらくそういう皇室の思いを代弁してのものだろうと思います。

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