コミケは差別と対峙できるか? ヘイトスピーチへの反対表明すら「表現の自由」を掲げ抵抗する声の大きな人たち

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3. 「山田太郎街宣」に反応したユーザーのツイートの計量テキスト分析

 もう一つ、コミケにおいて長い間行われてきたのが、「表現の自由」を標榜する山田太郎・元国会議員による街宣です。山田は、2016年の参議院議員選挙に新党改革の比例代表候補として出馬し、「表現の自由」を掲げて、落選しつつも29万票もの票を獲得しています

 ただ、この演説については、以前からマスコミ攻撃や、「フィクションは誰も傷つけない」と創作による影響を否定しつつも他方で「性表現規制が少子化を生んだ」と影響を肯定する発言をしていたり、矛盾がみられることで批判されております。表2に示されたツイートにも、賛同と批判が並んでいます。また、2016年の参院選においては、私は山田のアカウントをフォローしていたのですが、山田が主に当時の民進党などの、本来は表現規制に反対する議員を規制派として名指しするツイートを多くリツイートしていたことを記憶しています。

 そこで、山田の主張に賛同する人と批判する人の思考の違いを見るべく、山田のツイート、そして前述の「おぎの白饅頭」に関してツイートないしリツイートを行ったアカウントについて、計量テキスト分析を用いて調査を行ってみました。山田の街宣に関するツイートについては、私が同人誌を作るために取得していたC94のときのツイート(表2)をベースにしました。なお、ここから先は分析の際に行った操作などの説明も行いますが、分析に馴染みのない方は黒字で強調した部分をお読みください。

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 山田の発言については、対象のツイートをリツイートした人の内の1割、「おぎの白饅頭」については、元のツイート、及びリツイートをした人の2割を抽出しました。なお、作業時間の短縮とサンプルの確保のため、200を上限、15を下限としております。また抽出に際し、「おぎの白饅頭」の側については、ツイート及びリツイートの数で抽出される確率に重みをつけております(重複したアカウントは排除していない)。

 ツイートは2019年1月15日の2~7時頃に、最新の3,000件を抽出し、その中から2018年12月11日~2019年1月10日のツイートを使用しました。

・対象A……表2において最もリツイートを集めたツイートをリツイートした人。ツイート数246,279
・対象B……表2において山田に賛同するツイートをリツイートした人。ツイート数199,902
・対象C……表2において山田を批判するツイートをリツイートした人。ツイート数170,254
・対象D……表2において山田の街宣における関係者のツイートをリツイートした人。ツイート数44,546
・荻白A……「#おぎの白饅頭」で元のツイートを行った人。全体161、抽出32、有効29、ツイート数17,036
・荻白B……「#おぎの白饅頭」のリツイートを行った人。全体526、抽出105、有効97、ツイート数17,036

 ツイートは、メディアツイート(API検索で「http://t.co/~」「https://t.co/~」と表示されるもの)を「(メディア)」、絵文字(API検索で「<U+~>」と表示されるもの)を、Excelのマクロを用いて「(絵文字)」に置換し、リツイートやリプライのアカウントを排除し、「(メディア)」「(絵文字)」「(笑)」「()」(「(笑)」と同じ意味で使われる)、そして「w」が2~20個並んだものを「(草)」としてすべて感動詞として登録しました。また分析対象の英語はすべて全角、小文字に変換しております。

それ以外にカスタマイズを行っていないMeCabを使い、分析にはフリーのテキストマイニングソフト「KH Coder」を使いました。「KH Coder」については、樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析』(ナカニシヤ出版、2014年)をご参照ください。

 まず、対応分析を用いて、それぞれの分類と単語を布置したのが図1になります。対応分析においては、分析の対象とした層と、それぞれのパラメータ(ここでは単語)が同時に配置され、近い性質のものは近いところに配置されます。

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 使用したのは、全体での出現数が3,305以上の、KH Coderで「名詞B」などの「B」に振り分けられるひらがなだけの単語を除いた自立語400語です。図1上では、対象A、対象C、そしてそれ以外(対象BD、荻白AB)がグループになっています

 対象Aが一般的なオタク文化の消費者層(単語を見る限り、「艦これ」「刀剣乱舞」「Fate/Grand Order(FGO)」が見られる)、対象Bは政治問題に関して関心のある層である一方で、それ以外のグループは、「韓国」「防衛」など、韓国軍の駆逐艦が自衛隊機にレーダーを照射したとされる問題に関して積極的に発言しています。横軸を見ると、政権や性差別に関する話題とオタク文化は対極となるものと言えます

 他方で、「表現」も、縦軸の負の方向に布置されています。「刀剣」「fgo」「描く」「推す」「コミ」「コス」などが、縦軸の正方向に働いていることを考えると、オタク文化の消費者層と見られる対象A群はもとより、政権や性差別に関して関心の強い対象C群に比べても、その他群はむしろネット上で展開されている政治談義に関心があると言えるのかもしれません。ただこの縦軸の寄与率(全体での影響の割合)が8%と低いことも考慮しなければなりませんが(図1)。

 また関連語検索機能を使ってそれぞれの分類に特徴的な語を見ました。ここでは、Jaccard係数というパラメータを用いております。まず全般においては、対象B群においては、対韓国の問題のツイートが多く行われているということが伺えます。また荻白A群においては、リプライに絵文字や「草」、ないし「ありがとう」「おめでとう」などの感動詞はなく、リプライでフェミニズム(への憎悪?)について深めている様が見て取れます(表3)。

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