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脚本家・中園ミホが平成初期の屈辱的セクハラ社会をくぐり抜け描いてきた「日本の理不尽」

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<普通の企業だったら、絶対に『子どもがいます』と言ったら採用してもらえないだろうという、ヒロインの気持ちになったら、ごく自然にあのシーンはそうなりました。まだやっぱり男社会・男性社会だったし、色々な矛盾はあったけれど、怒りもあったけれど、それが世の中なんだっていう感覚でしたね>

『やまとなでしこ』での手応えが作風に影響を与えた

 女性にとって平等ではない社会に怒りを抱えながらも、「それが世の中なんだ」と諦めてしまう──。

 その傾向は00年代に入って変わっていく。理不尽なことが横行している社会に対して、もっと直接的に声をあげるようになったのだ。

 そのきっかけとなったのが、2000年放送の『やまとなでしこ』における主人公・神野桜子(松嶋菜々子)のキャラクターに、女性視聴者から共感の声が多く寄せられたことだった。

 神野桜子は貧乏な家に生まれたことをコンプレックスにしており、玉の輿に乗るべく合コンに情熱を燃やす客室乗務員というキャラクター。男を「金の成る木」と割り切って捉え、彼らを踏み台にしてのしあがっていこうという異色のヒロインだったが、視聴者(特に女性)からは嫌われるどころか、むしろ多くの支持を獲得した。その経験により中園は<その辺から私はとにかくみんなが口にできない本音を書いていこう>と思ったという。

中園ミホの敵は「女性差別」から「理不尽だらけの日本型社会」へ

 00年代も後半に入っていくと、派遣法改正やリーマンショックによる不況によって非正規雇用が増加。日本社会からはどんどん余裕がなくなっていく。

 そんな時期に、徹底した取材のもと書かれたのが、2007年放送『ハケンの品格』だ。

<みんなで同じように出勤して、同じように社員食堂で食事しているんですけど、だけど、収入はものすごい格差があるし、福利厚生の部分も何も助けてもらえないし、しかもやっぱり、一番怖いのは、いつ首を切られるかわからない。そういう叫び出しそうな不安のなかで、私は(取材した派遣社員の)彼女たちがすごく好きだなと思ったのは、『こんなこと言っても、明日またお化粧して、笑顔振りまいて出勤するんですけどね』って言って帰っていく彼女たちが、もういま、この人たちが日本の経済って支えているんじゃないかと。暴動も起こさず、決して出世もできない、明日首を切られるかもしれない、年金ももらえない(かもしれないのに)、国民年金も払わなければならない。それでも、あんなに明るく働いている人たちに向けて、本当に何か応援するようなドラマを書きたいなと思って書いたのが、『ハケンの品格』です>

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