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脚本家・中園ミホが平成初期の屈辱的セクハラ社会をくぐり抜け描いてきた「日本の理不尽」

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 『ハケンの品格』は、高いスキルをもっているが、かつてリストラされた経験をもつことから会社という組織自体を信用できなくなり、一匹狼として生きることを選んだ大前春子(篠原涼子)を主人公とした作品だが、非正規雇用の問題も、リストラの問題も、女性だけの問題ではない。

 ここに来て、中園が戦う相手は「女性差別」から、さらに大きなものに変わっていく。「あらゆる理不尽を下の者が受けなくてはならない日本社会」の被害者は女性だけではないからだ。

 2012年放送の『Doctor-X 外科医・大門未知子』は、フリーランスの天才外科医・大門未知子(米倉涼子)が大学病院の閉塞した組織体制のなかでいかに人がすり減っているかを炙り出す人気シリーズだが、ここで中園は「日本型の組織」という、さらに大きなものに怒りの矛先を向けていくのだ。

<上に逆らえず、これは間違っているなと思っても、『御意』って言う人たち。私、そうか、おじさんたちも苦労しているんだなと。経費は削減しなきゃいけない、これ以上企業は成長しないようだ、みたいな。そのなかで定年は延び、だけど、居座ると優秀な女の人たちから疎まれ、みたいな、そういう悲哀も含めて、おじさんたちも本当に組織のなかの矛盾を抱えて日々生きているわけですよね>

平成の次の時代の『ハケンの品格』を書かなくてはならない

 中園は『西郷どん』の仕事を終えたばかりだが、早くも次の作品のことを考えているようだ。

 なんとそれは、いまの時代にアップデートされた『ハケンの品格』であるという。

<もう一度私は『ハケンの品格』って書かなきゃいけないなと思っていて。AIっていうのがこれから出てくるでしょ? たぶん平成の次の時代に『ハケンの品格』を書くとしたら、大前春子さんの敵は正社員じゃなくてAIだと思うんですよ。時代の流れから取り残されていく人って、必ずいつの時代もいると思うし、その人たちにどんな元気になってもらうドラマを書けるかっていうのが、いまの私の頭のなかはそのことでいっぱいです>

 新しい時代の『ハケンの品格』ではおそらく、AIと同時に、その裏で労働者たちを使い捨てしようとする経営者を撃つ作品にもなるだろう。『ハケンの品格』の第2章が楽しみだ。

(倉野尾 実)

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