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リアルファーvsフェイクファー論争、自分なりの落としどころを探し続けて【フランス・パリ】

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百女百様/はらだ有彩

先々週からパリにいる。あと2週間滞在する予定である。出国前、1カ月分の荷造りをするにあたり、日本で通っているフランス語教室の先生が言った。

「なるべく地味な服装で行くように! 宝石とかブランド品はもちろんだけど、このご時世だから、毛皮もちょっと気をつけた方がいいかも。フェイクファーでもリアルファーと間違えられる可能性があるからあまりオススメしないよ! 派手もダメ、ゴージャスもダメ、おめかしもダメ! 何なら化粧もしない方がいいくらいだよ!」

クローゼットに吊るしてある服の中で一番温かい、古着のフェイクファーの上着を着て行こうと思っていた私は驚いた。いや絶対間違えないでしょ、こんなゴワゴワの毛並み。そのゴワゴワが気に入っているんだけど。

「去年行った時にも着てたけど大丈夫だったよ!?」と食い下がる私に、ボルドー生まれで、都会嫌いで心配性の先生は顔をしかめ続け、昨今の社会情勢を説き続け、1カ月の期間に想定されるリスクを挙げ続けた。多少極論が過ぎる気もするが、純粋にétranger(外国人)である私を心配してくれたのだろう。結局私は折れ、できるだけ飾り気のないコートを羽織って出発する運びとなった。

到着してみると想像通りというべきか、現地の人々は普通におめかししたり、ゴージャスな装いに身を包んだり、反対にもっさりしていたり、まあ、つまり、通常運転だった。暮らしているのだから当たり前である。

ヨーロッパの冬は寒い。もちろんモコモコのファーに包まっている人もたくさんいる。あまりにも出発前に指摘されたため、ファーを纏った人が歩いているとつい目で追いかけてしまう。

パリは過去に4度、1週間程度ずつ滞在したことがあり、うち1回は夏だった。つまり今回が4回目の冬という、大して根拠にはならなさそうな経験則に照らし合わせるとすれば、今年はフェイクファーが流行している、ような気がする。やや毛足の長い、ZA◯Aで多く出ていたような、すべすべのタイプ。それも若者だけでなく、比較的高齢の女性にも普及している、ような気がするのだ。

毛皮のリアル/フェイクを巡っては、近年ますます議論が激しくなっている。2017年にはGUCCIがリアルファーの使用廃止を宣言した。GUCCIと同じくケリング傘下だったステラ・マッカートニーは、デザイナー本人がベジタリアンであることも、毛皮やレザーを一切使わないことも随分前から有名である。LVMH傘下のジバンシィでは2018-19年の秋冬コレクションでファーをバンバン使い一瞬業界をざわつかせたが、実は精巧なフェイクだったというオチもあった。

このファー・フリー運動の活発化を受け、国際毛皮連盟は、フェイクファーが石油を原料とすること、土に還す方法がなくプラスチック汚染の原因となること、製造過程での二酸化炭素排出量がリアルファーよりも多いことを挙げて反論している。フェイクファーは最近ではエコファーと呼ばれるが、全くエコではないという論調だ。

この対決に「毛皮やレザーを禁止するのに肉は食べるのか?」「どうせ殺すなら有効利用した方がいいのでは?」「使用することそのものではなく、製造方法が問題なのでは?」という論争が加わり、誰もが納得できる結論を誰もが持っていない状態にある。

ではお前自身はどうなんだと言われると、困ったことにはっきりとした答えが出ていない。完全に個人的な考えを書くとすれば、「使うならふざけない」くらいだろうか。「食べ物で遊ばない」と同じ感覚かもしれない。寒さを凌ぐためにリアルファーを着ている人に「脱げ」と言う気にはならないが、防寒に関係のない部分にあしらうのは気が引ける。丈夫で通気性がよいという理由で革の靴や鞄を求める気持ちには反対しないが、あまり機能を発揮しない使われ方をしているとちょっと気になる。しかし廃棄される予定のものを使う場合はこの限りではない。数年前に某ブランドがリアルファーで食べ物のモチーフをパッチワークしたキーホルダーを売り出した時には、「特に防寒に関係ない」「モチーフが食べ物」という点が若干引っかかっていた。もちろん個人的な意見にすぎない。単純に好みの話をするならば、チープな素材のフェイクファーにびっしり刺繍が入っているような、にせものっぽいゴージャス感が好きだ。だけどその「にせもののゴージャス」だって、ファーが希少で高価であるという前提なしには成立しない。

こんな風に未だに明確な答えがない。いろいろ書いてはみたが、「ああ、素敵だな」と思った人がファーを着ていることもある。その気持ちとどう共存すればいいのだろう。というわけで、ファーを着ている素敵な人を観察することにした。

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