ーー「愛なんてジャンク!」は、「自分にとっては幸せな愛の思い出も、相手にとってはゴミね」と言い切ってしまう、女性の悲しい強がりと、未練を見せながらも新しい恋へと歩みだす強さが感じられる、アップテンポなナンバー。間奏の「私は愛のために死ねるオンナ、あなたとなら地獄の果てまでいく覚悟ができていたわ」というセリフも効果的ですね。
エスムラルダ:ソロ曲は、ネオ演歌、バラード、歌謡曲と、ややしっとりめの曲が多いので、及川先生が『3人の曲はユーロビートがいいね』とおっしゃって。とにかく中毒性の高い詞とメロディーなので、みなさん、ぜひ聴いてみてください! ちなみに、あのセリフは私への“あてがき”です。レコーディングのときに及川さんが、『間奏にセリフを入れたいね』と言いながら、さらさらっと書かれて。あのセリフは効いていますよね。
ドリアン・ホイみ:効いてるよね!
ーーソロ曲もそれぞれ、去っていった男を忘れられなかったり、傷つくと分かっていても愛を断ち切れなかったりする切ないものです。ちょっと身につまされる部分もありました。
エスムラルダ:3曲とも、幸せと縁遠い女性もしくはゲイの歌です(笑)。私の『ディレンマ』は道ならぬ恋の歌。中崎さんの仮歌はもっと淡々とした感じだったんですが、私が歌うと、恨み節風というか、かなり湿度の高いものになってしまいました(笑)。
ホイみ:『崖の花』は私にぴったりだと思います!
エスムラルダ:きたきた、ホイミ節(笑)。
観客が求めるドラァグクイーンとのギャップ
ホイみ:バラードでしっとりじっとり、みたいな曲が好きなのですが、まさにそういう曲。歌い上げました! という仕上がりになっていて、いい歌詞だとかみしめています。レコーディングのときから、解釈の深みも増してきました。ドリアンさんの『流砂の恋』は絢爛豪華よね。『大奥』っぽい。
ドリアン:ケレン味がね。ああいう感じ好き!。
ホイみ:私のは火サスのエンディングっぽい(笑)。
ーー今まで観てきたドラァグクイーンのパフォーマンスはリップシンク(口パク)が大半で、そういうものだと思っていました。自分たちのオリジナル曲を歌う八方不美人は、とても挑戦的なのでは?
ドリアン:ドラァグクイーンショーの主流はやっぱりリップシンクですが、アメリカのドラァグクイーンのル・ポールは90年代から歌っているし、日本でも、日出郎さんや関西のシモーヌ深雪さんが昔から歌っていて、星屑スキャットさん(ミッツ・マングローブ、メイリー・ムー、ギャランティーク和恵によるユニット)も大人気。私は女装歴12年ですが、歌うのも昔から好きで、女装だけじゃなくスッピンでも歌謡ユニットを組んでいます。歌とともに生きてきたクイーンですが、リップシンクのショーもする、器用貧乏な形でやらせていただいております。
ホイみ:なによりこの美貌!
ドリアン:なにそれどういう攻撃!?
エスムラルダ:私も昔から、歌うこと自体は好きだったんですが、生歌でお金をいただくことに躊躇があったんです。お客さんが私に求めているのはリップシンクのお笑いショーだし、自分の歌にその価値があるのかな、と。でも最近、縁あって一人芝居のミュージカルなどをやる機会があり、『そろそろ歌ってもいいかな』と思い始めました。
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