エスムラルダ:あと、生歌を披露するドラァグクイーンが急激に増えてきたのも、大きいですね。『え? 歌ってもいいの? じゃあ、アタシも!』みたいな(笑)。『ドラァグクイーンはリップシンク』という暗黙の了解みたいなものが薄まってきたので、今後『歌いたい』というドラァグクイーンは、もっと増えるかもしれませんね。
ドリアン:私たち歌が好きだったよねって。
ーー女装、といっても、楽曲や歌唱は本気です。性的マイノリティをとりまく環境には、いろいろ雑音が聞こえることもありますが……。
エスムラルダ:プロデューサーのおふたりの基本姿勢が、『外見は強烈だけど音楽は真面目にやる』なんです。見た目のインパクトで、まずはいろんな方に知っていただいて、興味を持ってくださった方には、ぜひ楽曲を聴いたり、ライブを観に来たりしてほしいなぁと思っています。
三者三様の個性が光る
デビュー以降、出演イベントは目白押し。昨年のクリスマスイブには新宿二丁目のクラブで「新宿おとあそび 2018」に出演し、アルバム「八方不美人」の収録曲に加え、中崎氏の作曲したクリマスソングを披露しました。
「愛なんてジャンク!」での三者三様の装いは、ゴージャスが代名詞のドラァグクイーンの面目躍如で、ソロ曲では衣裳はもちろんカツラもチェンジ。中でも、身長181センチ、ヒールは17センチ、トップも盛り盛りで2メートル超えというドリアンは、声量の豊かさと振り付けのキレのよさもあって、見ていると思わずパワーが湧いてきそうなほど。
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観客からの歌への声援も熱狂的でしたが、より盛り上がったのが、トークの秀逸さ。芸名の長いドリアンは自己紹介で「覚えづらかったら、お前って呼んでください♪」と、洗練されたビジュアルとはギャップのありすぎる昭和なオバチャン風味のツッコミをどんどん入れて、前列の観客にも積極的にからみ喜ばれていました。
MCは苦手と言うホイみは、ふたりにいじられながらも、ちあきなおみとホイットニー・ヒューストンを敬愛していたがゆえに合体させたという芸名の説明で、先輩諸氏からの「こんなに大きく出た女装は近年まれにみる」という裏話を明かし、笑いとともに「かわいー!」という黄色い声もしっかりゲットしていました。
新年を迎え、1月14日には新宿タワーレコードでインストアライブを開催予定。「三連休で疲れたところを、我々で最後に疲れていただけば、気持ちよく火曜日から働けるはず」(ドリアン)。
後編では、八方不美人や個人のドラァグクイーンとしての表現活動と、一社会人としての生活の両立について触れます。
ディーバユニット「八方不美人」が語る、ゲイとしてドラァグクイーンとして、そしてひとりの社会人として生きるということ
日本最大のゲイタウンとして知られる新宿二丁目は、性的マイノリティの人たちが集う多様性あふれる街であるとともに、刺激的な文化が育まれる場所でもあります。…
撮影/尾藤能暢
取材協力/AiSOTOPE LOUNGE
Information
現在、全国のタワーレコードやAmazonなどで、デビューミニアルバム『八方不美人』絶賛発売中!