物価が上がっても賃金が上がらない理由~日本経済の抱えるジレンマ

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人件費と物流費が高騰し、利益を圧迫している

 日本特有の事情としては、人件費の高騰があるだろう。日本経済は慢性的な人手不足となっており、特に工場や物流の現場で働く若い労働者の確保が難しくなっている。アルバイトの時給はここ数年、かなり上昇しており、これがメーカーの利益を圧縮するとともに、物流コストの増大につながっている。

 これまで食品を中心としたメーカー各社は、原材料価格や人件費の高騰に対して、価格を据え置く代わりに内容量を減らすという、いわゆる「ステルス値上げ」を実施してきた。だがいくら表面的な価格を据え置いたところで、内容量を減らしている以上、値上げであることに違いはない。

 諸外国ではこうしたケースはあまり見当たらず、原材料価格が高騰すれば、すぐに製品価格に反映されるので、経済全体で物価上昇が進みやすい。

 日本の市場環境はかなり特殊な環境にあるが、それでも、こうしたごまかしにも限度というものがある。

 今回、アイス各社が一斉に値上げを表明したということは、いよいよ、経済環境がステルス値上げに対応できなくなってきたと解釈するのが妥当だろう。今回の措置を受けて、名目上の価格を引き上げるメーカーが増えてくる可能性は十分にある。

 もし、名目上の値上げが進むようなら、消費者は価格についてより敏感になっておく必要があるだろう。

 各社が名目上の値上げに踏み切るといっても、しばらくの間は、ステルス値上げの商品と、名目上の値上げの商品が混在する。消費者は複数の商品について比較検討する際に、本当はどちらが安いのかしっかり吟味しなければならない。

 高いか安いかを判断するためには、グラムあたりの価格を計算して比較するよりほかない。少々、面倒かもしれないが、商品を手に取ったら、グラム当たりの単価を計算するクセを付ける必要がありそうだ。

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