政治・社会

物価が上がっても賃金が上がらない理由~日本経済の抱えるジレンマ

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値上げをしたくてもできなかったが……

 消費者としては、計算を徹底することで生活を防衛するよりほかないが、名目上の値上げが進んだ場合、経済全体にはどのような影響が及ぶのだろうか。もっとも考えられるのはインフレの進行である。

 名目上の値上げを行う品目が増えれば増えるほど、物価に上昇圧力が加わることになる。経済学的に言うと、コストの上昇が物価を押し上げるコストプッシュ・インフレである。コストプッシュ・インフレは景気が拡大している時に起こりやすいが、今の日本経済は消費が弱く、値上げをすると販売が落ち込むというジレンマを抱えている。

 牛丼チェーン各社も牛肉価格の高騰によりホンネではすぐにでも値上げしたいところだが、従来の価格を据え置いている。吉野家を運営する吉野家ホールディングスは2018年3〜8月期(第2四半期)の決算で赤字転落したが、同社の業績悪化は、容易に値上げができない状況を如実に表わしている。

 だが、先ほど説明したように、原材料価格の高騰は諸外国の経済成長が原因であり、人件費の高騰は人口減少を背景にしたものである。つまりどちらも構造的な問題であり、その状況を簡単に変えることはできない。そうなってくると、消費が弱く、景気が振るわない中で、物価の上昇だけが進むという結果になりやすい。

消費者にとっては厳しい年になりそう

 多くの人はあまり認識していないが、日本は厳密に言えばデフレではない。最近は物価の上昇率が鈍化し、マイナスになることもあるが、基本的にアベノミクスがスタートして以降、消費者物価指数の絶対値は常に一本調子で上がってきた。予定通りの物価上昇率を実現できないことについて、「デフレ傾向が強い」と説明しているだけであって、物価そのものは着実に上がっているのだ。

 物価がある程度、上昇しても、賃金の上昇がそれを上回れば、家計はそれほど苦労せずに済む。だがアルバイトの時給が多少上昇したところで、労働者の賃金は十分に上がっていないため、多くの家計では、買えるモノの量が減っていると考えられる。

 過去数年は、物価上昇を実現するため政府が経済界に対して、具体的な数字を出して賃上げを要請していたが、今年の春闘からは、具体的な数値を提示しない方針を固めている。

 米国経済の鈍化予測もあり、2019年の賃上げはあまり期待できないだろう。

 そうなってくると、モノの値段だけが上がって、賃金が上がらないという状況に拍車がかかる可能性があり、多くの世帯では財布の紐を固くする可能性が高い。2019年は、昨年よりも慎重になった方がよいかもしれない。

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