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「市販の薬で記憶が蘇る」という驚きの研究結果に飛びついてはいけない

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Thinkstock/Photo by okskaz

 以前から薬局やドラッグストアで普通に販売されているありふれた市販薬が、実は記憶を回復させる効果があったという驚くべき研究結果が、東京大学、北海道大学、京都大学などの研究チームによって発表された。

 この発表を知った人は、すでにドラッグストアに走っているかもしれない。しかし、慌ててはいけない。というのも、多くの報道では取り上げられていないのだが、場合によっては逆に記憶が低下するケースもあるためだ。

 とはいえ、今回の研究結果によって記憶を回復させる仕組みがわかったことで、今後のアルツハイマーや認知症の治療にも希望が見えてくる。では、どの薬がどのような効果を見せたのか。

ヒスタミンが記憶を蘇らせる実験

 この研究結果が発表されたのは、1月8日付けの米医学誌電子版『Biological Psychiatry』だ。東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授、京都大学大学院医学研究科の高橋英彦准教授、北海道大学大学院薬学研究院の野村洋講師らの研究グループが発表した。

 このグループは、脳内のヒスタミン神経を活性化させる薬を投与することで、忘れてしまった記憶が蘇ることを、マウスと人で実験して、証明した。記憶したことの多くは、時間の経過と共に思い出せなくなる傾向にあるが、何かの拍子に思い出すことがある。このことから、忘れたと思っている記憶も、実は脳内のどこかに残っているのではないかと従来考えられてきた。

 そこで研究グループが目をつけたのが、アレルギー関連物質として働くヒスタミンだった。ヒスタミンは睡眠や食欲にもかかわっていると考えられているが、記憶にもかかわっていると考えられてきた。

 なぜなら、ヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン剤が記憶を低下させることがわかっていたからだ。ならば、その逆はどうか、という実験が行われた。

マウスの記憶が回復した

 実験はまず、マウスで行われた。マウスが匂いや触感で覚えた物体のことを忘れた後に、ヒスタミンによって思い出せるかどうかという検証だ。実験箱の中に2種の物体を置き、そこにマウスを入れる。

 マウスは2種類の物体の匂いを嗅いだり触れたりすることで、それぞれの特徴を記憶する。次に2種類の物体の内の1つを、新しいおもちゃに取り替えてみる。

 すると、マウスは記憶にない新しいおもちゃの匂いを嗅いだり触れたりしようとするのだ。つまり、この段階では、マウスは1つの物体については記憶していることになる。

 おもちゃを記憶するトレーニングとテストの期間が1日以内と短い時は、マウスは最初から置かれているおもちゃの匂いと触感を記憶しているため、常に新しいおもちゃだけの匂いと触感を確認した。

 ところが3日以上経過すると、マウスは最初のおもちゃも忘れてしまうことがわかった。そこでヒスタミンH3受容体逆作動薬を投与することでヒスタミンを増やしてやった結果、マウスは1週間前の記憶を取り戻し、この効果は1カ月以上経過しても続いたという。

 この実験を解析すると、時脳領域の1つである嗅周皮質でヒスタミンが放出され、ヒスタミンH2受容体が活性化した結果として記憶が回復していることがわかった。

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