2.軽減措置、過度な期待感は禁物
私は基本的には消費税増税に反対ですが、それ以上に軽減税率には大反対です。その理由を述べるとキリがないし、本稿の趣旨とは少し異なるのでここでは触れませんが、今回の増税に関しては「増税感をやわらげる」ということから期間限定的にさまざまな軽減措置が考えられています。しかしながら、それらはいずれも期間限定であり、増税負担を恒久的になくすわけではなく、あくまでも「増税感をやわらげる」ことにすぎません。期間が過ぎればそれらの措置はなくなってしまいますので、あまり過度に期待するのは禁物と言っていいでしょう。
3.税率アップ後の勘違いに注意
「増税感」ということについていえば、心理学的な面で考えて注意すべきことがあります。それは税率アップ後の価格の勘違いです。行動経済学には「ヒューリスティック」という概念があります。これはじっくりと論理的に考えるのではなく、ドタ勘や経験則で瞬時に判断してしまうことを言います。
たとえばこんな例を挙げてみましょう。現在1060円(税込)で売っている商品があるとします。税抜価格は982円です(982×1.08≒1060)。仮にこの商品に軽減税率が適用されると考えた場合、今後も8%の税率は変わりませんから当然、消費税引き上げ後も売値は変わらないはずです。
ところが、仮に消費税引き上げ後に価格が1080円と表示されたとしましょう。この場合、1080円という価格が勘違いさせるポイントなのです。なぜならこれまでの税率8%という数字が頭の中に入っていますから、1080円という価格を提示されると、ごく自然に1000円+消費税8%(=80円)という公式が頭の中に浮かんでくるからです。「ああ、やっぱり軽減税率のおかげで本来なら消費税10%で1100円のところを計1080円になっているんだ」と誤解をしてしまうのです。
この商品の価格が変わらず、従来通りに軽減税率が適用されるのであれば、税抜き価格はそれまでと同じ982円となるはずですから、1000円になると実質的には18円の値上げとなります。結果として気がつかないまま値上げを受け入れてしまうことになりかねません。