
(左)日本橋三越伊勢丹本店(公式Twitterより)/(右)日本橋高島屋S.C.(専門店公式Instagramより)。日本橋川を隔て、徒歩10分程度の距離にある。
東京の中心地、日本橋。多くの企業が拠点を置くビジネス街であると同時に、歴史ある老舗が軒を連ねる商業地域でもあるが、その様相は今、大きく変わりつつある。
昨年9月、日本橋高島屋は新館と本館ガレリアを同時オープンさせ、114のショップを有する「日本橋高島屋S.C.」として、新たなスタートを切った。また10月には、三越伊勢丹ホールディングスも日本橋三越本店をリニューアルオープンさせている。日本橋の顔ともいえる老舗百貨店が、時を同じくして生まれ変わったわけだ。
しかしその一方で、三越伊勢丹は昨年9月に伊勢丹相模原店(神奈川県相模原市)、伊勢丹府中店(東京都府中市)、新潟三越(新潟県新潟市)の閉店を発表している。今、百貨店業界は大きな転換期を迎えているようだ。
これからの時代、百貨店はどのように変わっていくのだろうか。経営コンサルティングを行う株式会社デュアルイノベーションの代表取締役・川崎隆夫氏に、百貨店業界の“これから”について伺った。
これからの百貨店には、アミューズメントをプロデュースする能力が求められる
「今の時代、百貨店のみならず日本社会全体が変革を迎えています」と、川崎氏は語る。

川崎隆夫 経営士
株式会社デュアルイノベーション代表取締役。広告代理店にてアカウントプランナーとして広告やマーケティング企画などに携わったのち、1998年に株式会社デュアルイノベーションを設立。「情報ライブ ミヤネ屋」など、多数メディアへの出演実績あり。
HP http://www.dual-i.co.jp/
「社会の成熟化が進み、新しいヒット商品やヒットサービスが生まれにくくなってきています。そのため、小売業のビジネスモデルのトレンドは、単に商品を売るだけではなく、カスタマー・エクスペリエンス(顧客の期待通り、または期待を超える対応を提供することにより、顧客の満足度を向上させること)を重視する形へと変遷しつつあります。
また、消費者においても、多少値が張ってもエコロジーな商品を購入するなど、環境問題や社会問題に関心を抱き、消費行動にも反映させる動きが広まってきています。それゆえ、企業にも社会貢献となるサービスの提供などによって、顧客のロイヤリティを向上させることが求められているのです。
いずれにせよ、現代のビジネスは『コト消費』を重視しつつ、そこに『モノ消費』を付随させていくようなスタイルへと変わりつつあります」(川崎氏、以下同)
では、世の中が変わりつつあるなかで、これからの百貨店にはいったい何が求められるのだろうか。
「まず、事業領域をどのように拡大させていくかということは、百貨店に限らず流通業における課題ですね。たとえば、家電量販店のヤマダ電機などは、リフォームや不動産といった住宅関係の事業も手掛けています。
しかし、そのなかでも百貨店はスーパーやコンビニとは違い、富裕層がメインターゲットとなっている場合が多く、また富裕層は複数のお店と取り引きを持っていることが多いですから、やはり自店舗でしか味わえない体験やアミューズメントをプロデュースしていくことが、これからの百貨店には求められていくのではないでしょうか」
リニューアルで高島屋は変革を成し遂げた……三越伊勢丹はむしろ後退?
これからの百貨店は、アミューズメント体験をプロデュースしていく必要がある―――前述の通り、2018年には日本橋の高島屋と三越がリニューアルしているが、果たしてその方向性は“正解”と言えるのだろうか。
「日本橋高島屋に関しては、やはり、『コト消費』という点にウェイトを置いた改革を行っています。私もリニューアルした日本橋高島屋を見に行きましたが、ヨガ教室や茶道教室といった『コト消費』の場に加え、ポケモンセンターのようなユニークなショップも兼ね備えており、そこでしか味わえない体験を提供できる場になっていました」
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