謝罪には順番がある
そこで「謝罪」を成功に導くステップを6段階に整理してみた。これは順番を守らなくてはいけないものだ。
1:命や人体に関わることがないかを確認
2:経緯・事態を時系列で整理して完全に把握する
3:「謝罪シナリオ」を書く
4:原因を究明し、再発防止策をまとめる
5:直接の被害者に、直接謝罪に行く
6:必要であれば、対外的に発表する
1から順に説明しよう。これは「交通事故」を目に浮かべてもらえばわかりやすい。運転免許証更新の時に見るビデオにもあるものだ。接触事故を起こしておいて、自分のクルマの傷んだ部分や次のアポのことを心配している場合ではない。まずは身体に関わることの注視だ。
2は特に重要だ。事実確認は正確にしなければならない。これを時系列で書き並べる。ここには何月何日何時何分、場所、人数、人物名なども含めて正確なデータを集めねばならない。これは続く3・4番に移るためにとても重要なことであるのだ。
3は、「謝罪」に行くためのシナリオ作成だ。今度は誰が誰に何をどう謝るかである。ダメな謝罪は「ごめんなさい」「すみませんでした」を並べるだけのものである。それに加えて弁解や言い訳、嘘、無理な正当化が含まれると謝罪はゼロ点。より相手の気持ちを炎上させることになる。そこで自分(たち)の行動やセリフ。時には服装や土産の準備も含めてシナリオを作成する必要がある。
4を忘れる人が多い。謝罪は謝辞を伝えるのが一番の目的ではあるが、そこにセットで持っていかねばならないものが「再発防止策」だ。たとえば新入社員が朝寝坊して会議に遅れたとしよう。「もう寝坊しません」「明日から頑張ります」では再発防止とはいえない。
レストランで食中毒が起こった時も一緒。食中毒で入院した人に「もうしません」「明日から頑張ります」では、理解してもらえないだろう。朝寝坊なら、「今日、会社の帰りにめざまし時計を3個買って帰り、トイレや玄関、リビングにも置きます」と言えば、上司も少し笑いながら、「頼むでぇ!」と言ってくれるだろう。レストランなら、食中毒を起こした店だけでなく、他店も閉鎖して、完全にクリンアップして、保健所の検査も受け、その上に食中毒の起こった経緯を徹底検証して、再発しないようにマニュアルの変更も行うだろう。そうすれば被害者の方も「承知しました。また食べに行きますね!」とまた応援団になってくれるかもしれない。
5は4までできていたらできる行動だ。ただし、謝りに行く相手の順番を間違ってはいけない。心の針が最もマイナスに振れた人から謝りに行くべきだ。もちろん、事件・事故が起こってからあまり時間が経っていないほうがいい。「相手がクールダウンするまで待とう」という人もいるが、今のネット時代、のんびりしていると事実が何倍にも曲げられて伝えられ、「炎上」の真っ只中に入って行くことになるだろう。そういう意味でも、私は謝罪をスピードアップすることを勧めている。
6については、あなたや所属する会社と社会との関係性によって、大々的に謝罪会見を行ったり、新聞に謝罪広告を打ったりしなければならないだということだ。あなたが公人や公的な仕事に関わっていれば、メディアに対して公式発表も必要になる。
さてさて、私はあなた方の無事を祈るしかない。この連載では今後も、あふれる「謝罪」を参考にしながら、皆さんの無事と平穏な社会生活が送れるようなヒントをお送りしようと考える。
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