医学的な治療を要する一歩手前の「かくれ不眠」に要注意

【この記事のキーワード】

睡眠不足は肥満や糖尿病とも関係している

 さらに高血圧の発症率では、睡眠障害が無い人に比べて入眠障害群や睡眠維持障害群(中途覚醒の意)では高くなっているというデータもある。

「不眠によって自律神経のバランスが乱れ、緊張感を高める交感神経が優位となり心も体も緊張状態になってしまうのです。そこに運動不足、喫煙、暴飲暴食などの生活習慣が重なれば心疾患や脳卒中を発症するリスクが高まります」

 睡眠不足と肥満や糖尿病、うつ病なども密接に関係している。

「睡眠時間が短くなると食欲を増進させるグレリンというホルモンの分泌が増え、逆に食欲を抑制するレプチンというホルモンが減少することが明らかになっています。睡眠時間と肥満の関係が説明できます」

「ある会社の男性従業員2649名を8年間追跡した疾患に関する調査では、睡眠障害の無い人に比べ、入眠障害群で2.98倍、睡眠維持障害群では2.23倍になりました(Kawakami N.et al.Diabetes Care 2004;27:282-283)。糖尿病の発症にはさまざまな要因が絡み合っていますが、睡眠不足もそのひとつであることが伺えます」

「うつ病患者の方は、ほとんどが何らかの睡眠障害を訴えます。特徴的なのは2時~3時ごろに目が覚めてしまう早朝覚醒や睡眠時間が延長する過眠などですが、睡眠の量や質、そして睡眠リズムの乱れとうつ病は密接に関係しています」

かくれ不眠に注意が必要

 最近、睡眠に関するさまざまな問題を訴える患者さんが非常に増えているというが、古賀教授が特に注意しているのが「かくれ不眠」というべき状態にある人たちの増加だ。

 かくれ不眠とは「軽度・短期不眠状態」で、医学的な治療を要する一歩手前の状態。放置しておくとやがて本格的な不眠症につながる。不眠は「不眠症」から単なる「睡眠不足」まで広いスペクトラムにわたっており、その両者の間に多くのかくれ不眠の状態が存在する。

かくれ不眠の特徴は

① 軽度かつ短期的な不眠である
② 睡眠の悩みを抱えている
③ よい睡眠への積極的な対処を行っていない
④ 専門的・医学的治療は必要ない

などである。

「適切な睡眠がとれず日中の活動に不具合を感じ、その状態が2~3週間続いていたらかくれ不眠と考えてよいと思います」

 睡眠障害には非常に複雑で多様な疾患が含まれるが、その中で、「重症になると死亡の可能性もある」のが睡眠時無呼吸症候群である。この患者さんが仕事中に眠ってしまい重大な事故を起こした例がいくつか報告されたことから、ある程度は睡眠障害に対する関心も高まってきている。

「しかしながら、日本は睡眠に関する関心が低く、“眠ってしまうのはもったいない意識”が強すぎて睡眠を真剣に考えない<睡眠低開発国>といえます。医学的なデータではありませんが、『かくれ不眠者は、快眠者より個人年収が低くなる』(睡眠改善委員会による「快眠者・かくれ不眠者調査」)という研究報告があります。かくれ不眠者はストレスを抱きやすく、意欲や集中力、処理能力、判断力が低下します。このため相対的に勤務時間が長くなって疲労が蓄積し、十分に仕事の成果を上げることができなくなって、年収も上がりづらくなると考えられるのです」

「こうした切実なデータが出ないとなかなか睡眠に関して意識が変わりません。眠いものはしょうがない、眠れないからしょうがない、あるいは寝ないことにプライドを感じるような人たちもいますが、そうした人たちの意識が変わるだけで、健康な人はずいぶん増えると思います」と、古賀教授は睡眠に関する意識改革の必要性を指摘する。

自分が「かくれ不眠者」かどうか気になったら以下のページでチェックしてみよう。
●かくれ不眠ラボ(睡眠改善委員会)

1 2

「医学的な治療を要する一歩手前の「かくれ不眠」に要注意」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。